複製開始機序については分子レベルで詳細に解析されているが、複製終了機序についてはほとんど分かっていない。申請者らは、分子Xが複製終了の制御に関与するという仮説を立て、この仮説を裏付ける実験結果を分子・細胞レベルで確認し、脊椎動物でこの機能が保存されていることまでを明らかにしている。本研究では、分子Xノックアウトマウスを複製終了不全モデルマウスとして作製し、複製終了機序が破綻することによる発がんや老化などの個体レベルでの影響を解析することを目的とする。これまでに、129x1/SvJ系統マウスを用いてX遺伝子ノックアウトマウスを樹立したが、129x1/SvJ系統への戻し交配によって致死性回避の改善がみられず、実験で用いるマウス数の確保が現実的には難しい状況であった。そこで、Cre/loxPシステムを用いて致死性を回避する従来の方法でX遺伝子コンディショナルノックアウトマウスを樹立することにした。現在、C57BL/6-Tg(CAG-flpe)36Ito/ItoRbrcマウスと掛け合わせて、X遺伝子のエキソン3と4の間のイントロンに挿入されたFRT領域に挟まれたlacZとneo遺伝子を除去する段階である。次の段階として、Cre-ERT2マウスと交配させて、TAM処理によって条件的にloxP領域に挟まれた遺伝子Xのエキソン2を除去することで、遺伝子Xの年齢依存的な発がんや老化における機能解析を行う予定である。また、C57BL/6N背景で作製されたトランスジェニックマウスなので、コンディショナルノックアウトマウス作製後に戻し交配の必要性が無いので、直ぐに実験を始められる点が重要である。
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