研究実績の概要 |
全国健康保険協会福岡支部の保険請求データ及び健診データを用い、平成22年度に特定保健指導の動機付け保健指導、積極的保健指導の対象者となった者のうち、平成22年度に指導を受けた者と受けていない者の、医療費比較を行った。追跡機関は平成22年4月1日から平成27年3月31日までとした。医療費は、入院、入院外、調剤別で算出し、また、ICD10コードを用い、生活習慣病別(糖尿病、高血圧、高脂血症、心疾患、脳血管疾患、悪性新生物)の入院履歴と入院医療費(平成22年度4月1日時点の年代別)についても算出した。 分析の結果、平成22年度に特定保健指導が必要とされた者は29,191名で、うち、指導を受けていない者は26,390名、受けた者は2,801名であった。特定保健指導の対象となった者のうち、指導を受けた群と受けていない群で、その後の医療費を比較したところ、有意差は認められなかった。生活習慣病別入院履歴については、高血圧、心疾患、脳血管疾患では指導を受けた群の方が入院割合は低い傾向にあった。しかしながら、生活習慣病のみの入院医療費についても有意差はみられなかった。 特定保健指導を受けることによる医療費への影響は少ないと考えられるが、一方で高血圧、心疾患、脳血管疾患による入院割合は指導を受けた群の方が低いことから、特定保健指導は高血圧や高血圧に関連する疾患の重症化予防になることが示唆される。しかしながら、保健指導を受けた群と受けていない群に群分けする際に、選択バイアスが生じている可能性が否定できないため、今後はマッチング等の調整が必要となると考えられる。
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