研究実績の概要 |
特定健診受診者のうち糖尿病で要医療と判定された者について、レセプトデータから判断した受療行動の違いにより糖尿病関連疾患の発生リスクの評価を行った。 対象は平成22年度に特定健診を受診した全国健康保険協会福岡支部の被保険者のうち、糖尿病について要医療となった者(ヘモグロビンA1cが6.5%以上または空腹時血糖が126mg/dl以上)とし、これらの平成23年度の糖尿病に関する入院外の受診状況を調査し、平成24年から26年までの3年間における糖尿病関連疾患による入院について比較した。 受診状況は平成23年度のレセプトで把握し、糖尿病で3ヶ月に1度定期的に受診する者を「定期受診群」、それ以外を「不定期受診群」、全く受診がなかった者を「未受診群」として分類した。糖尿病関連疾患による入院は、出血性卒中、虚血性脳卒中、急性心筋梗塞、急性心筋梗塞を除く虚血性心疾患、末梢動脈性疾患、腎症、網膜症、神経障害についてICD-10により同定し、受診状況とこれら疾患による入院の発生頻度についてχ2検定を行った。また、各疾患による入院の有無を従属変数、性別、年齢、ヘモグロビンA1c、空腹時血糖、HDL-C、LDL-C、中性脂肪、質問表による服薬状況(血圧、脂質)および受診状況(定期受診、不定期受診、未受診)を独立変数とし多重ロジスティック回帰分析を行った。 分析の結果、定期受診群が433名(12.1%)、不定期受診群が1,013名(28.2%)、未受診群が2,147名(59.8%)であった。平均年齢は、それぞれ、53.4±6.8歳、52.8±6.9歳、51.5±6.6歳であった。定期受診群に比べて不定期受診群において、急性心筋梗塞を除く虚血性疾患による入院の頻度が有意に多いという結果であった。他の疾患においても同様の傾向がみられ、定期受診による糖尿病合併症の発症を抑制する可能性が示唆された。
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