本研究の目的は、タイの自動車産業を事例に産業クラスターが海外研究開発拠点のイノベーションに与える影響の全体像を明らかにすることである。 第1に先行研究の検討を通じて産業クラスターが海外研究開発拠点に与える影響を分析するためのフレームワークを提示した。その成果を紀要論文として公表している。 第2に海外における日系自動車企業の研究開発の全体像の分析を行った。分析の結果、完成車メーカーの進出先とサプライヤーの進出先は概ね一致しており、サプライヤーの研究開発が完成車メーカーの研究開発を支えていると考えられる。その成果を学会発表と紀要論文として公表している。 第3に完成車メーカーに対するインタビュー調査を行った。インタビュー調査を通じて、海外研究開発拠点の設立にはサプライヤーの集積とその能力向上が重要であること、現地の大学から十分な数のエンジニアを採用できていることが明らかになった。これらの成果を2019年度に学会発表と論文として公表する予定である。 第4にタイにおいて完成車メーカーとサプライヤーに対するインタビュー調査を行った。インタビュー調査の結果、完成車メーカー・サプライヤーともタイにおいて日本と同様の製品を同一の方法で生産していることが明らかになった。すなわち、日本のものづくりと取引関係をタイでも再現しようとしているのである。これらの成果をシンポジウムの発表、調査報告書にして公表している。また、2019年度には共著して公表する予定である。
|