研究課題/領域番号 |
15K21587
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研究機関 | 福井工業高等専門学校 |
研究代表者 |
金田 直人 福井工業高等専門学校, 機械工学科, 講師 (10507148)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 繊維機械 / 仮撚り / 化学繊維 / 加撚 / 見かけ糸太さ / 撚角度 |
研究実績の概要 |
本研究では,衣服等の繊維製品に用いられる仮撚加工糸を生産する汎用仮撚加工機械で,加工中の糸の糸形態(見かけ糸太さおよび撚角度)が容易に取得可能な非接触型糸形態検査システムを開発することを目的としている. そのため平成27年度では,仮撚加工機における,熱を与えながら糸を加工(変形)する「延伸・加熱・加撚部」の,撚りのマイグレーション現象を解明することで,加工中の糸形態に与える影響を調査し,糸品質向上のための資料を得るための実験を行った.実験方法として,仮撚加工機に一般的に設置されているヒータおよび冷却板の部分を指す加熱・加撚工程に,糸軸方向に移動可能な高速度カメラを設置し,同工程中の糸を撮影した.なお,加工中の糸形態は加熱時間に大きく影響を受けることが考えられるため,糸送り速度をパラメータにヒータ入口から冷却板出口までの範囲で実験を行った.また,加工中の糸形態とヒータ内での糸温度の相互関係を確認するために,糸温度を簡易式を用いて理論的に算出した. 実験結果として,糸がヒータ内で加熱され始めると見かけ糸太さは徐々に減少し,ヒータ内で一定の値に安定した.また,見かけ糸太さは,糸送り速度が増加すると安定するまでに時間が多くかかることが明らかとなった.さらに糸温度がガラス転移温度に到達すると,見かけ糸太さは激減することがわかった.これより,糸温度がガラス転移温度に到達することで加工中の糸の剛性と粘性が低下し,糸が変形しやすくなったと考えられる.撚角度はヒータ内で徐々に増加し,ヒータ内で一定の値に安定した.また見かけ糸太さと同様,糸送り速度が増加すると安定するまでに時間が多くかかっていることが確認できた.つまり,加工中の糸形態は,ヒータ内の熱で大きな変形を与えられているといえ,糸送り速度によって,その変形する時間が異なることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では,視覚センサを使用して糸形態の把握を予定していたが,高速(糸送り速度500m/min)に加工されている糸を捉える処理速度ならびに解像度を持った同センサはなく,高速域の現象を捉えることができる高速度カメラで糸を撮影することになった.そのため,リアルタイムでの糸形態の検査は実現していないが,延伸・加熱・加撚部での糸形態(見かけ糸太さおよび撚角度)を正確に把握することができ,糸の生産条件によって同形態が異なることが明らかとなった.また,糸温度と糸形態との相互関係も明確にすることができた.この知見を用いることで,糸の生産方法についての資料を提供できるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究成果によって,延伸・加熱・加撚部での糸形態(見かけ糸太さ・撚角度)が生産条件によって異なることが明らかとなったが,糸温度は簡易式を用いているため,厳密には糸形態との比較はできていない.そのため,今後は加工中の糸温度を数値計算を用いて厳密に解き,実験結果との比較・検証を行う.その上で,3次元モデルを用いたマルチフィラメント糸の糸形態シミュレーションを実施する予定でいる.また,数値計算を実施するために用いる糸物性を知るために,引張試験機を用いて調査を行う.
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