本研究は,平成27~29年にかけて,衣服等の繊維製品に用いられる仮撚加工糸を生産する汎用仮撚加工機械で,加工中の糸の糸形態(見かけ糸太さおよび 撚角度)が容易に取得可能な非接触型糸形態検査システムを開発し,従来ある生産条件の更なる細分化ならびに先駆的高機能を有する意匠加工糸の設計資料を得ることを目的とした. 平成27年度は,ディスクフリクション仮撚加工機の延伸・加熱・加撚部における非接触型糸形態検査システムを製作し,従来通りの生産方法で糸形態を実験的に確認した.その結果,加工中の糸形態はヒータ内の熱で大きく変形しており,糸送り速度によって,変形する時間が異なることが明らかとなった. 平成28年度は,糸形態の測定方法の妥当性を評価するとともに,糸に引張り・熱・ねじりを与える生産条件が糸形態に及ぼす影響を実験的かつ理論的に検証した.ここでは平成27年度の実験結果をもとに,加工中の糸形態とヒータ内での糸温度の相互関係を確認するために,糸温度を簡易式を用いて理論的に算出した.その結果,ヒータ内での糸形態の変化は糸温度がガラス転移温度に到達した際に急激な変形をすることが明らかとなった. 平成29年度は,加工中および加工後の糸形態の形成メカニズムを理論的に解明した後,糸の最適生産条件を提案しようとした.ここで平成28年度までの研究によって,最適生産条件の決定には,加工中の糸の不安定挙動(サージング)の解明が必要不可欠ということが明らかとなったため,加工中の糸張力測定やFFT解析を実施することで解明を試みた.さらに,施撚部内での糸形態についても確認を行い,サージングの発生要因についての究明に取り組んだ.しかしながら,サージングの発生要因については未だ解明できておらず,それに伴い糸の最適生産条件の提案には至っていない.今後の研究では,そのサージングの発生要因の解明が急務となっている.
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