研究課題/領域番号 |
15K21588
|
研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
神谷 直希 愛知県立大学, 情報科学部, 助教 (00580945)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 腸腰筋認識 / 腸骨筋認識 / 大腰筋認識 / 骨格筋形状モデリング / 骨格筋複合モデル |
研究実績の概要 |
本研究課題の目標は,解剖学的に関係する複数の骨格筋の同時自動解析を実現することである.ここでは,特に腸腰筋を対象とし,腸腰筋を構成する大腰筋および腸骨筋の同時自動解析を実現することを目的とする. 本年度の成果は,研究実施計画に基づき,数理解剖モデルに基づく腸骨筋の自動認識手順の開発と結果の評価,および大腰筋抽出結果との統合を行った.これまでに作成された数理解剖モデルを用い,腸骨筋領域の自動認識手法を開発した.実験症例20症例を用い,解剖学的情報に基づく腸骨筋と骨格の付着部位(ランドマーク)を選別し,各ランドマークを画像上から検出する手段の開発および,数理解剖モデルの当てはめを実現した.腸腰筋,すなわち大腰筋と腸骨筋の2つの筋を同時認識では,前年度構築した,大腰筋と腸骨筋の2つの筋の同時認識に必要な,複数の筋の筋線維の走行モデリングに基づき,両者の筋の認識精度の検証を行った.その結果,大腰筋では,複合モデリングにより,平均一致度が8.3%向上し,腸骨筋についても,3.2%の認識精度が向上された.これは,本研究の対象とする複合筋の認識に,複合モデルが有効であることを意味する. また,本年度新たに,全身CT画像を用いて本複合モデルを当てはめ,全身CT画像上から自動的に腸腰筋領域を認識する手法の初期検討を行った.これは,様々な筋萎縮症例において,歩行に関する当該骨格筋の影響について機能解析を行う初期的な取り組みであり,次年度以降さらに認識された筋の機能解析へ発展させる予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度は,腸骨筋の自動認識手法の開発に加え,従来型の単一の筋の認識の組み合わせによる解剖学的に関連する2つの筋の認識を実現(Jaccardの類似度により76.9%の一致率,81.8%の再現率,93.3%の適合率)した.特に,筋線維の走行モデリングを複数の筋認識に最適化し,本研究対象である,腸腰筋の自動認識の初期手順が提案できた.研究中期である,本年度では,単一の骨格筋モデルである大腰筋,腸骨筋モデルとそれらをあわせた腸腰筋モデルで単一モデルと比較し,平均一致度がそれぞれ8.3%,3.2%の向上が見られたため,本研究の目的である筋の複合モデルは関連する複合筋の認識には有効であると示されたためである.ただし,新たに課題も明らかとなったため,既に研究計画済みの内容に加え,以下の今後の研究の推進方策で述べる内容に基づき,本プロジェクトを推進する予定である.以上より,本研究課題の達成度はおおむね順調に進展していると結論付ける.
|
今後の研究の推進方策 |
腸骨筋と大腰筋の自動認識およびそれらをあわせた腸腰筋領域の自動認識の初期手順がこれまでに実現された.そのため,最終年度では,腸腰筋解析精度の向上と複数筋認識に対する評価,検証を行う.ここでは,腸骨筋の自動認識に基づく腸腰筋の自動認識を体幹部CTデータベースに適用し,抽出性能の検証と手法の改善を行う.具体的な目標として,抽出成功率90%以上を目指す.また,これまでの結果では,数理解剖モデルを用いた部位別の筋モデリングとそれに基づく部位別の筋の認識精度の向上を実現しているが,それらを合わせた筋(腸骨筋+大腰筋)の2部位を合わせた1部位(腸腰筋)の認識について,複数の数理モデルの統合による複数骨格筋の同時自動認識について他部位における展開についても議論する.そして,現在までの進捗状況において述べたように,認識された骨格筋の解析についても本研究における認識結果を用いた応用について,全身CT画像を用い,モデルを用いた骨格筋認識,解析の臨床応用についても検討する. 最後に,ここまでの結果について,国際学会および国内学会において発表し,数理解剖モデルを用いた筋の自動認識手法の確立とそれらを合わせた複数の部位別骨格筋の自動認識について,論文発表を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入予定物品(サーバ用ストレージ1品)が入手困難となり代替品で対応したため.
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度の年度当初に前年度廃盤につき購入できなかったサーバ用ストレージの代替品調達を行う.
|