最終年度は,研究計画に基づいて,福祉避難所の将来需要を推計した.具体的には兵庫県内の福祉避難所指定に関する現況,課題把握のためのアンケート調査を行うとともに,高齢者人口の統計を行い,その統計とアンケート結果をもとに,福祉避難所の災害に対する準備状況・災害時避難に際しての支障を明らかにした. 本研究結果より, 福祉避難所の現在の状況で多数欠点が見つかり,災害時に福祉避難所として運営できるか不安である,ということがわかった. このことから,まず行政がこの状況を把握し,施設の管理者,地域住民に福祉避難所のことを知ってもらう必要があると考える.そして,知ってもらった上で,各々がすべきことを判断し自ら動くべきである.行政,地域が一体となり災害について考えていくことが防災・減災につながっていくのではないかとの結論に至った.福祉避難所に必要性・重要性については,東日本大震災で改めて認識されることとなったが,それ以降も既存の福祉施設の機能面を条件に一律に整備が進められているのみで,地域の過去の災害履歴や被災リスクを踏まえたものになっていない.本研究は,アンケート調査,ヒアリング調査等の複数の社会調査手法によって,行政,施設管理者,利用者といった様々な立場の関係者の現場の声を集約するとともに,ハザードマップ等の既存の空間情報を活用し,地域の災害履歴や被災リスクを踏まえて分析したり将来の需要予測を行ったりすることで,より実効性の高い福祉避難所を整備していくための方法を提案するkことができた. 本研究の成果は,今後ますます高齢者社会が進むことが予想される中で,巨大化・高頻度化・複合化する自然災害による被害をできる限り軽減し,安全かつ豊かで質の高い国民生活の実現に寄与するものと期待される.
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