研究実績の概要 |
最終年度は、Al-Zr添加鉄基粒子分散強化合金の強度の温度依存性を明らかにすることに重点を置いた。前年度と同様の15Cr-2W-4Al-0.8Zr-0.35Y2O3を合金成分として、ArおよびH2ガス雰囲気下で機械的合金化(Mechanical Alloying: MA)処理を行い、得られたMA粉末を1150℃で真空加圧焼結を施して2種の合金を製造した。これらに対して、室温から700℃までの引張試験を行ったところ、いずれの温度範囲においても引張強度に有意差はほとんど認められないことが確認された。一方、H2ガス雰囲気下MA処理材の全伸びは、Arガス雰囲気下MA処理材のそれよりも2倍程度大きく、いずれの試験温度でも同様の結果を示すことが判明した。 本研究は、合金設計や粉末プロセス環境条件を改善することにより、高強度粒子分散強化合金を創製するとともに、その強化機構の解明を目指したものである。平成27年度は、MA雰囲気ガス中のO, N量を制御したAl添加鉄基粒子分散強化合金を製造し、固化体中に含有するEx.O, N量を低減させることで、合金内に形成される酸化物や窒化物などの析出量やサイズが減少し、衝撃特性が向上することを示した。この指針に基づいて、第三元素としてのZr添加およびH2ガスを雰囲気としたMAプロセスを適用することにより、従来のArガス雰囲気下MA処理材を凌駕する引張変形伸びを持つ、Al-Zr添加鉄基粒子分散強化合金が得られることを示した。平成28年度は、上記合金のナノ・メゾスケールでの微細組織観察と構造解析を行うことにより、Zr添加が合金中のナノ酸化物の微細化および高密度化を図り、さらにH2ガスを雰囲気としたMAプロセスを施すことで、鋼中のメゾバブル形成が抑制され、粒子分散強化合金の強度向上が図られることが実験的に示された。
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