平成30年度においては,市町村合併により広域化した自治体への訪問聞き取り調査を主に実施した。前年度までの研究で小中一貫教育との関係性が見いだされたため,国立教育政策研究所のプロジェクト研究と共同研究により,小中一貫教育を実施する地域を重点的に調査した。 合併前の市町村域を越えた学校統廃合は通学距離や地域住民との関係で困難が大きいため,多くの市町村ではできる限り合併前の市町村域に1校は学校を維持しようとする姿勢が見られた。この際,小中一貫教育を導入することにより,小・中学校間の児童生徒間の交流や教員の学校(課程)間乗り入れ授業等を持たせる工夫のように,1学年1学級程度の小規模校でも地域に学校を残そうとする様々な工夫が見られた。 この際,義務教育学校のように完全に小・中学校を一体化させる事例もあったが,制度化された併設型小・中学校のように小・中学校は別組織として運用する事例もあった。このように地域の実態に応じて小中一貫教育の在り方は異なっており,市町村合併後の教育行政においては合併前の地域による文化の違いも考慮が求められることも見えてきた。 また,近年はコミュニティ・スクール等の施策により地域と学校の関係性強化が進んでおり,学校教育における地域人材の活用が求められている。過疎地を中心に適任な地域人材を探すのに苦労するような事例も見出された。その意味でも,教育行政の広域化により幅広い人材を活用できる可能性も見出された。 市町村合併前後の費用削減効果についても事例から考え,どの自治体でも一定の効果が見られていたことが分かった。ただし,費用の最も大部分を占める人件費関連については,教育行政部分だけではなく一般行政部分も含めた定年等の退職者の補充を控える自然減に頼らざるを得ず,限定的であることも見えてきた。
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