研究課題/領域番号 |
15K21600
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
山田 竜平 国立天文台, RISE月惑星探査検討室, 特任研究員 (60647379)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 広帯域地震計 / 容量変位型検出器 / フィードバック回路 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、研究実施計画に従い、小型軽量の容量変位型広帯域地震計の設計を行った。本研究では、ペネトレータ搭載用に開発された地震計をベースにして、極限環境域(海底、火山地域、極域、月惑星)に適用可能な小型軽量、かつ耐性をもった広帯域地震計の開発を行う事を目的としている。この地震計は、地上で汎用的に使用されている広帯域地震計CMG3-ESPと同等の性能を実現する事を目指しており、およそ0.033-50Hzの周波数帯で2000V/m/sec以上の感度を達成する事が目標となる。 本年度はこの周波数応答を実現するための地震計の構造、広帯域化用のフィードバック回路の設計を行った。ペネトレータ搭載用地震計はマグネット-コイル型の電磁式地震計であるため、容量変位型として使用するためには、振子とケース端面に電極板を付着する事や、フィードバック用のコイルを新たに巻きつける必要がある。ここでは、目標性能を達成するための容量変位型の検出器の特性やフィードバックコイルの抵抗値、フィードバック回路の回路構成について検討を行った。 この結果、まず、検出器については、過去にプロトモデルとして作成した容量変位型検出器と同等の物を使用する事で3000V/m/sec程度の高感度を実現できる事が分かった。また、回路も一次の微分・積分回路を組み合わせることで、30秒程度の長周期まで速度に対して平坦な応答を実現でき、かつフィードバックコイルの抵抗値は地震計の応答に大きく影響しない事も示せた。 本設計結果により、およそ0.03-3.0Hz程度までは3000V/m/secの感度をもった地震計を実現可能な事を示せたが、一方で高周波側まで感度を延ばす事が困難である事も分かった。また、設計値でノイズレベルは従来の惑星探査用地震計よりも低減可能な事も示せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、平成27年度下半期から試作品の要素試験を行う予定であったが、設計とその検証に予定よりも時間がかかった事と、地震計の新規製作に想定以上の金額と納期がかかるため、まだ試験には至っていない。ただし、要素開発試験は平成28年度上半期まで行う事を予定していたので、研究計画は予定通りに終了できる事を想定している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の設計結果、過去に製作したプロトモデルに、新しく開発したフィードバック回路を接続する事で、少なくとも30秒程度の長周期側まで感度を延ばし、かつノイズレベルを従来の惑星探査用地震計よりも低減可能な事が分かった。平成28年度は実際に、フィードバック回路を製造し、プロトモデルに取り付けることで、設計通りの周波数応答を実現できるか確認する。また、新型地震計を水沢江刺の地震観測所に設置して、新しく購入するリファレンス用の地震計と比較観測を行い、妥当な地動応答を示すか検証する。更に、熱真空試験を行う事で、温度変化、大気圧変化に対して周波数応答やノイズレベルがどう変化するか、極限環境に対する特性変化についての基礎データを取得する事を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に繰り越しが生じた理由は地震計広帯域化用の部材を購入しなかったことによる。これは、設計が計画より遅れた事と、容量変位型検出器についてはプロトモデルのものを転用できる事が分かったので、検出器用の金属板を購入する必要がない事にもよっている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、予定通り、広帯域化用の部材を購入する。上述したよう、検出器用の金属板を購入する必要はないが、フィードバック回路用の素子や工作備品、もしくは製造依頼費用に使用する予定である。
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