昨年度の調査から、開発した小型広帯域地震計は、地震計単体のオフセット変動が大きいために、出力が飽和して地動を検出できない事が分かった。そこで、本年度は、まずこのオフセット変動を補正する機構を開発して、フィードバック回路に取り付けた。この機構は、回路の初段のアンプの前に取り付けて、出力の大きさに応じてフィードバックをかける事でオフセットを制御できるようにしている。このオフセット補正機構を取り付けた広帯域地震計を国立天文台水沢の江刺地球潮汐観測施設内に設置し、市販されている広帯域地震計CMG-3と比較観測を行ったところ、正常に地動を検出できるようになった事を確認できた。 一方で、開発した地震計は、当初目標としていた固有周期30秒を現状、実現できていなかった。これは、フィードバック回路の設計当時、地震計単体(容量変位計)の周波数応答が十分に把握できていなかった事による。昨年度、容量変位計単体の周波数応答の調査を行い、その特性を明らかにしたので、本年度はその応答に合わせて、固有周期30秒を実現できる、新型のフィードバック回路の設計、製作を行った。この新型フィードバック回路を取り付けた広帯域地震計の周波数応答を調査したところ、設計通り固有周期30秒を実現できる事を確認できた。また、同様に江刺地球潮汐観測施設に地震計を設置して、CMG-3と比較観測を実施した。その結果、0.2-1.0Hz程度の周波数帯ではCMG-3と同等の地動応答を示したが、より長周期側では広帯域計のノイズが支配的である事が分かった。これは、使用しているアンプのノイズレベルが高い事、また、地震計単体の特性に対する回路による長周期側の限界である事が考えられる。
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