本研究課題では,日本民謡における地域的特徴(各地域の民謡を構成する要素とそれらの相互的関係)を定量的に明らかにすることが目的である. この目的を実現するために,初年度(平成27年度)は『日本民謡大観』(日本放送協会出版)に掲載されている全楽曲の旋律を地域ごとにXML形式として電子データ化した.そして,2年目は楽曲のコンテンツ情報にあたる採録地情報の収集することで,分析基盤を整備した.昨年度は歌詞のデータ化を進める上で作業に掛かる問題が発生したため,当初の計画を見直し,歌詞のデータ化にかかる体制を変更し,最終年度に実施する旋律の地域間の比較分析を優先させて実施した.小泉文夫が提唱した4種のテトラコルドを形成する力の働く地域間の類似性・相違性を示し,各テトラコルドの使用頻度を全国的規模で図示する方法を提案した.多変量解析に基づく計量比較を実施することでデータ収集をした地域間の類似性・相違性を明らかにした.これらの成果は,国内学会および国際学会発表,学際的研究会の開催と,京都大学東南アジア地域研究研究所および日本民俗音楽学会の研究例会において報告した.また,分析結果からは見えてこない音楽の地域性に関する情報を補間するために,2018年3月27日から3月30日まで宮崎県の諸塚村と椎葉村で調査を実施した.本研究課題では実現できなかった民謡の歌詞に内在する特徴の分析については,新たに歌詞の分析に特化した課題を立ち上げ,継続して取り組む次第である.
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