研究課題
本研究は、(患肢と対側の健常肢においても疼痛が出現する)ミラーイメージペインの発症に大脳皮質の神経回路再編が関与するか明らかにする事を目的としている。前年度までの研究から、患肢と同側の一次体性感覚野(ipsi.-S1)において、1層抑制性神経細胞およびアストロサイトの活動が亢進し、2/3層錐体細胞の活動は抑制される事を見出した。さらにGABAA受容体のアンタゴニスト(gabazine)をipsi.-S1に局所投与すると5層錐体細胞の神経回路再編が生じ、健常肢への刺激に対する2/3層神経細胞の反応の亢進および疼痛様行動が誘発される事も明らかにした。平成28年度の研究では、1)ipsi.-S1で生じる抑制性神経細胞の活動亢進は反対側からの入力に依存して生じている事をin vivo 2光子Ca2+イメージング法により明らかにした。また、2)ipsi.-S1に gabazineを投与する事で生じる神経回路再編には興奮性神経細胞およびアストロサイトの活動亢進が必要である事も明らかにした。3)また、ipsi.-S1におけるアストロサイトの活動亢進に代謝型グルタミン酸5型(mGluR5)が関与する予備データがあるため、膜分子の局在解析に秀でた凍結割断レプリカ法を用いてipsi.-S1におけるアストロサイトのmGluR5の発現亢進が生じているか検討した。しかし、従来の免疫電顕法に使用した抗体では凍結割断レプリカ法においてその特異性を担保できなかったため、現在脳組織の固定条件や複数のmGluR5抗体を使用し(既にmGluR5の発現が報告されている)海馬CA1錐体細胞放線層において検討を行っている。以上の研究成果から、慢性疼痛時ipsi.-S1は抑制性神経細胞の活動亢進により興奮性神経細胞は抑制されているが、この抑制性神経細胞の活動が抑制され、ipsi.-S1において神経回路再編が生じる事がミラーイメージペイン発症メカニズムの一端であると示唆された。
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eNeuro
巻: 3(3) ページ: -
10.1523/ENEURO.0004-16.2016
http://kaibou2.med.lab.u-fukui.ac.jp/ja/
http://www.nips.ac.jp/hsdev/