• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

DNA損傷応答・修復反応におけるタンキラーゼの機能

研究課題

研究課題/領域番号 15K21605
研究機関公益財団法人がん研究会

研究代表者

岡本 啓治  公益財団法人がん研究会, その他部局等, 研究員 (30533682)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワードポリADPリボシル化 / DNA修復反応 / DNA損傷応答反応 / X線感受性
研究実績の概要

ポリADPリボシル化酵素の一つタンキラーゼは、種々のタンパク質と結合することでテロメア長制御やWnt細胞増殖経路の制御に関わっていることが知られる多機能性タンパク質である。現在知られている機能の多くはがんの形質の維持に関わっており、タンキラーゼ阻害剤はがん分子標的薬として現在非常に注目を集めている。そのためタンキラーゼの機能の全貌を解き明かすことが今後のがん研究、創薬研究を進めていくうえで重要となる。本研究ではタンキラーゼ新規機能の解明を目標とし、新規結合タンパク質Merit40を介したDNA損傷応答・修復反応におけるタンキラーゼの機能解析を進めている。
Merit40はBRCA1やBRCC3などBRCA1A複合体の構成因子であり、相同組換えを活性化することでDNA二本鎖切断の修復を行う。タンキラーゼがこのようなDNA修復反応に関わっているかを検証するためにタンキラーゼ阻害剤によるX線感受性の変化を調べたところ、確かにタンキラーゼの酵素活性を阻害することでX線による細胞の致死率が増大した。そこで、X線処理後にタンキラーゼがDNA損傷部位に局在するのかを免疫染色で調べた結果、DNA損傷応答マーカーであるH2AXと共局在することが分かった。またタンキラーゼ阻害剤処理を行った細胞にX線を照射したところ相同組換えマーカーであるRAD51のフォーカス形成が低下していることを見出した。また、同様のフォーカス形成の低下が、タンキラーゼと結合できないMerit40変異体を発現している細胞でも見られた。以上の結果から、タンキラーゼとMerit40がDNA損傷部位で相互作用することで相同組換え反応制御に寄与していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究における平成27年度の計画は、タンキラーゼまたはタンキラーゼ-Merit40相互作用がDNA損傷応答・修復反応の制御に関与しているかについてタンパクレベルで検証することであった。
DNA損傷時のタンキラーゼの挙動とDNA損傷応答・修復反応制御に果たす役割――外来性のタンキラーゼを発現させた細胞を用いてDNA損傷部位への局在を検討した結果、タンキラーゼのDNA損傷部位へのリクルートが確認された。タンキラーゼ阻害によるDNA損傷応答反応の解析については、当初予定していたタンキラーゼ阻害剤XAV939を用いての検討では、X線に対する感受性の増大は見られたがDNA修復反応関連タンパク質の局在の変化があまり見られなかった。そこで、XAV939より阻害活性の高いG007-LKを用いて同様の実験を行った結果、X線に対する感受性の増大とともに、タンキラーゼ阻害によるRAD51のフォーカス形成の低下がはっきりと見られるようになった。その一方で、siRNAをもちいて同様の検討を行ったところ、ノックダウンによる感受性の増大は見られたが、外来性タンキラーゼを再発現させることによるレスキュー実験がうまくいかず、現在検討中である。
DNA修復反応におけるタンキラーゼ-Merit40相互作用の重要性―-タンキラーゼ結合モチーフを欠損したMerti40変異体を作製し、それを細胞内で発現させた時のDNA損傷への影響を検討したところ、RAD51の局在の消失が見られた。
いくつかの実験で予期せぬトラブルはあるものの、タンキラーゼがDNA損傷部位に局在し、Merit40と結合することで相同組換えの制御に関わっているという結果は固まりつつあり、研究計画自体はおおむね順調に進行しているといえる。

今後の研究の推進方策

もともと平成28年度でタンキラーゼがどのDNA修復反応に関わっているかについて検討していくことになっていたが、平成27年度の成果として、RAD51の局在変化からDNA損傷のうち特に相同組換え反応制御に寄与していることを示唆するデータが得られた。そこで、相同組換えへの関与を細胞実験で検討していくこととする。方法としては、当初の計画通り、作用機序の知られているDNA損傷誘導型の抗がん剤(シスプラチン、エトポシド、カンプトテシン、ブレオマイシンなど)に対する感受性がタンキラーゼ阻害剤処理でどのように変化するかを検討する。また、より直接的な検証方法として、DR-GFPシステムを用いて相同組換え頻度を測定する。
また、DNA二本鎖切断に対するDNA修復反応である相同組換えと非相同末端結合は互いに抑制しあうことで修復反応の選択を行うといわれている。そのため、タンキラーゼが非相同組換えの活性化に機能しているかについても検討していく。平成27年度に実施予定であった非相同末端結合促進因子である53BP1の局在の変化を免疫染色で調べる。この結果次第でもし非相同末端結合に対する関与を示唆するデータが得られた場合、非相同末端結合活性を評価していく。テロメア結合タンパク質TRF2の機能を抑制すると非相同末端結合が活性化することでテロメア融合が生じることが知られている。そこで、タンキラーゼを阻害した時にTRF2欠損によって生じるテロメア融合の頻度を調べることでタンキラーゼが非相同末端結合に関わっているかどうかを評価する。
これらの細胞実験に加えて、タンキラーゼ阻害剤がX線による制がん効果の増大につながるかについてマウス個体を用いて実験する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] タンキラーゼによるインターフェロン反応の制御2015

    • 著者名/発表者名
      岡本啓治、大石智一、黒岩美佳、家村俊一郎、夏目徹、清宮啓之
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会
    • 発表場所
      神戸ポートピアランド
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi