研究課題
マクロオートファジー(以後、オートファジー)は真核生物に広く保存された細胞内分解システムの一つであり、細胞内成分やオルガネラを隔離膜と呼ばれる二重膜で隔離後、液胞/リソソームと融合し、内膜ごと分解する一連の過程を指す。これまでに酵母を用いた遺伝学的な解析から約40のAutophagy-related gene (Atg)が同定されている。このうち18 の主要なAtgタンパク質は 6つの機能グループ(Atg1キナーゼ複合体、PI3キナーゼ複合体、Atg2-Atg18複合体、Atg12-Atg5結合反応系、Atg8-PE結合反応系、Atg9)に分類され、協調して働くことでオートファゴソームを形成する。本研究ではオートファジーに必須のタンパク質のうち、唯一の6回膜貫通型タンパク質Atg9の構造生物学的解析を行うことで、Atg9の分子機能や集積機構を明らかにすることを目的としている。今年度は初年度に確立した精製手法により、様々な生物種、結晶化タグを用いて、Atg9の熱安定性試験を行った。これにより2種類の安定性の高いAtg9コンストラクトを作製した。これらを用いて蒸気拡散や脂質キュービックフェーズ法による結晶化を試みているが、これまでのところ、結晶は得られていない。そこで近年急激に報告されているクライオ電子顕微鏡による単粒子解析に向けた検討を行ったところ、ネガティブ染色で均一な粒子であることが確認できた。
3: やや遅れている
6回膜貫通タンパク質であるAtg9の立体構造解析を目指して結晶化を行っているが、結晶が得られていない。原因の一つはAtg9の熱安定性の低さであり、様々な生物種を検討し、比較的安定性の高い種を見出している。もう一つの原因として、結晶化に用いている界面活性剤が適していない可能性がある。タンパク質が安定で、かつ、結晶化に適するものを見つける必要がある。
様々な生物種の中で、精製したタンパク質の熱安定性が高い種に絞り、結晶化を引き続き行う。また、構造認識抗体の作製やクライオ電子顕微鏡による構造解析など新たな手法にも挑戦する。
納入に時間がかかったため。
今年度、試薬購入に充てる。
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Cell Reports
巻: 16 ページ: 19-27
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2016.05.066
http://www.bikaken.or.jp/