これまでに酵母を用いた遺伝学的な解析から30 以上のAutophagy-related gene (Atg)が同定されている。このうち18 の主要なAtgタンパク質は 6つの機能グループ(Atg1キナーゼ複合体、PI3キナーゼ複合体、Atg2-Atg18複合体、Atg12-Atg5結合反応系、Atg8-PE結合反応系、Atg9)に分類され、協調して働くことでオートファゴソームを形成する。 本研究ではオートファジーに必須のタンパク質のうち、唯一の6回膜貫通型タンパク質Atg9の構造生物学的解析を行うことで、Atg9の分子機能を明らかにすることを目的としている。当初、Hisタグ発現系を構築したが収量、純度が共に低く、結晶化するにあたり問題であった。そこで初年度はAtg9の可溶化条件およびアフィニティ精製法の再検討を行い、これまでよりも数倍可溶化効率が高く、構造純度の高いAtg9を精製できる系を確立した。次年度ではクライオ電子顕微鏡による単粒子解析に向けた検討を行い、ネガティブ染色で均一な粒子を確認できた。そこで最終年度では、高分解能な単粒子解析を目指し、界面活性剤非存在下で、電子顕微鏡解析を行うこととした。具体的には、界面活性剤で可溶化したAtg9と膜骨格タンパク質、脂質を混合し、徐々に界面活性剤を除くことで、Atg9をナノディスク中に再構成することに成功した。これをネガティブ染色すると均一な粒子を確認できた。さらにクライオ電子顕微鏡測定を行ったところ、ネガティブ測定時よりも小さな粒子が観察され、サンプル凍結時に粒子が崩壊することが示唆された。一方、初年度から様々な種のAtg9や界面活性剤、添加剤を加えて、結晶化(シッティングドロップ蒸気拡散法や脂質メソフェーズ法)を試みているが、結晶は得られていない。今後、クライオ条件の検討を行うとともに、結晶化条件の探索も引き続き行う。
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