研究課題
本研究は、放射線が引き起こすDNA突然変異を通じて、野生生物の集団中の遺伝子構造の変化を明らかにするため、福島県内の帰還困難区域内(年間積算線量が20mSv以上)に生息する小型げっ歯類アカネズミ(Apodemus speciosus)の次世代へのDNA変異の影響を評価することを目的としている。DNA変異を低コストで継続的に観測できる手法としてゲノム全体の0.1から1%を網羅的かつ迅速に解析することができるRADシーケンス(Restriction site Associated DNA sequence)法に着目し、アカネズミのゲノム配列情報を用いてin silico解析による制限酵素の選定を行った。次世代シーケンサーで読み取られた配列内でエクソン配列が最も多く含まれるのはSbfI/MspIで19.6%、エクソン配列全体から最も高い割合でエクソン配列を読み取ることができるのはBfaI/CviAIIで21.2%であった。これらの中から、ゲノム全体の0.19%を網羅しかつ13.8%のエクソン配列を読み取ることができるKpnI/PstIの組み合わせが効率的に解析可能であると考えられ、以降の解析に用いた。次世代への変異はメス個体とその胎仔、およびオス個体と精子細胞における配列の比較によって評価することとし、その解析手法について検討した。メス個体と胎仔についてKpnI/PstIで処理した遺伝子配列の比較を行ったところ、帰還困難区域内と対象区において変異率に違いは見られなかった。オス個体では最初にmtDNA配列を用いて1細胞毎と100細胞毎での解析について検討したところ、相対的評価にはなるものの数百~数千細胞をまとめてシークエンスを行うことが経済的・効率的に妥当と考えられた。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 3件) 備考 (1件)
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