最終年度においては、日本におけるトレイルランニング、マウンテンバイク、ウォーキングの林地利用の発展状況とその課題についての取りまとめを行った。また、日本にて、サバイバルゲーム、及びアドベンチャーパークとしての林地利用を進める事業者にも聞き取り調査を行い、当初の計画よりも幅広く、新たな林地利用の実態を把握することができた。加えて、台湾の事例調査を行い、行政管理部門のイニシアティブ等を通じて、新たな利用を含めた多様な林地利用の発展と、利用主体、地権者、行政管理部門等におけるコンフリクトの調整がなされてきた実態を把握した。これらの成果として、日本のトレイルランニングの林地利用の現状と課題に関する学術論文、及びアメリカ・イギリスにおける多面的な林地利用の調整に関する学術論文を執筆した。 最終年度を含む全期間の調査結果として、日本では、都市近郊林や自然公園等の利用過密地において、これらの新たな利用を含めた利用者の多様化が加速していることが明らかとなった。この中で、新たな利用主体であるトレイルランナーやマウンテンバイカーをめぐって、従来の利用主体であるウォーカーからの危険視に基づく対立が深刻化していた。同時に、林地・山道の地権者や行政管理部門、或いは自然保護団体等においても、新たな利用主体に対する自然保護面や安全管理面の懸念が大きくなっていた。 この課題の解決にあたっては、アメリカ・イギリス・台湾における先行事例調査を踏まえて、①利用の競合しない山村地域にて新たな利用の発展を促すこと、②各主体による林地・山道の利用とその権利及び安全管理責任を明確化すること、③各主体の利害を代表し他主体との調整の窓口となる利用者組織を成熟させること、④地方行政管理部門による利害調整機能を向上させること等が不可欠であると提起した。
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