研究課題/領域番号 |
15K21620
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
芳賀 聡 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門草地利用研究領域, 研究員 (90442748)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 周産期疾病 / ビタミンE / 分娩ストレス / 乳腺 / 肝機能 / 乳牛 / 初乳 |
研究実績の概要 |
【目的】「乳腺」は妊娠末期から血中ビタミンE(VE)を初乳へ多量に輸送し、VE体内動態を司る「肝臓」は分娩を境に代謝負担が増加し、機能が低下する。その結果、周産期にVE欠乏(低VE血症)が起き、免疫機能等が低下、周産期病発症リスクが高まる。申請者はウシ肝臓と乳腺においてVE輸送調節に関わる新規2分子『αTTP』『Afamin』の発現を見出した。本申請課題では周産期乳牛の肝臓および乳腺におけるαTTP、Afamin の発現特性を明らかにし、周産期病のリスク因子である低VE血症化の分子メカニズムを解明する。【主な成果】1,周産期乳牛の肝臓および乳腺におけるαTTP、AfaminのmRNA発現変動および血中、乳中、肝臓中および乳腺組織中のVEレベルの挙動を明らかにした。2,周産期の肝臓メタボローム解析を行い、特に脂質成分269種を検出した。3,動静脈差法を用いて、VEおよび乳成分基質の乳腺取込率を評価したが、VE取込の活性化は確認できなかった。【意義と重要性】周産期に起きる低VE血症化に肝αTTP、Afamin発現抑制によるVE分泌能の低下が関与していることが新たに示唆された。また、メタボローム解析により、周産期肝機能変化の代謝マーカー候補の探索が可能となった。以上より、酪農現場で大きな課題になっている周産期疾病のリスク因子である低VE血症化の分子メカニズムの一端の解明に向けて着実に知見が得られており、周産期疾病の予防と低減に貢献し得ると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度実施予定の周産期乳牛試験は順調に遂行できた。そのため、H28年度に実施予定であった周産期の肝臓および乳腺におけるαTTP、Afamin mRNA発現量解析、血中、乳中および組織中のVE動態、乳腺における乳タンパクマーカー発現解析を前倒しで実施し、データを得ることに成功している。さらに肝臓における網羅的なメタボローム解析も予定を前倒しして実施し、周産期の肝臓から269種の脂質を検出し現在マーカー候補を鋭意探索している状況にある。以上より、本研究は当初の研究計画を臨機応変に変更しながら、おおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は以下の通りである。1、作製したαTTPおよびAfaminの特異抗体を用いたタンパク発現定量実験系を構築し、周産期の組織中や血中のタンパク発現量を調べる。これにより、周産期に起きる低VE血症に関与する肝臓および乳腺機能の分子メカニズムを更に明らかにする。2、メタボローム解析により検出された269種の脂質成分について、周産期の代謝変化と関連する新規マーカーの絞込みを行う。3、細胞培養および組織培養により、αTTPおよびAfamin発現に及ぼすホルモン刺激の影響を精査する。以上の実験により、周産期疾病のリスク因子である低VE血症化の分子メカニズムの解明に向けた基礎的な知見を得る予定である。
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