我々は悪性度の高い様々な癌に発現するアミノ酸トランスポーターLAT1(L-type amino acid transporter 1)を標的とした新規PETトレーサー[18F]CTP0006を既に開発している。本研究では、悪性度の高い前立腺癌を対象とした新たな診断技術を開発するためLAT1陽性前立腺癌モデル動物を用いたPETイメージング研究を行い、[18F]CTP0006 の悪性度および治療効果判定に関する有用性を検討し、将来、前立腺癌を対象とした臨床研究を行うための基礎データを得ることを目的とする。 平成28年度は基礎検討として前立腺癌モデル動物における腫瘍内LAT1発現の検討のため前年度に確立したウエスタンブロット法によるLAT1タンパク発現検出法を用いて、腫瘍細胞株および腫瘍組織におけるLAT1タンパク発現レベルの検討および前立腺癌モデル動物の作成を試みた。 ヒト前立腺癌細胞株DU-145およびPC-3について、培養細胞およびBALB/cヌードマウスに移植・作成した腫瘍組織をサンプルとしてLAT1発現レベルの検討を行った。その結果、両細胞株とも培養細胞および腫瘍組織においてLAT1タンパクの強い発現が認められ、モデル動物作成に適している細胞株であることが判明した。 PETプローブの評価には皮下移植モデルでも可能であるが、臨床的有用性を高めるためには最終的には標的臓器内に存在する腫瘍をイメージング出来ることを証明することが重要である。そこで、同所移植モデルとしてヒト前立腺癌細胞株の前立腺内への移植を試みた。BALB/cヌードマウスの前立腺へ細胞株をマイクロシリンジで注入、一定期間経過後に腫瘍の形成を検討した。その結果、原因は不明であるが、手術に伴い死亡率が高く、かつ生着率も10%未満であり、術式および細胞の注入に関して更なる詳細な検討が必要であることが示唆された。
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