研究実績の概要 |
本年度はまず、前年度に開発したGSK3バイオセンサーの感度・S/Nの改善を目的とし、バイオセンサー領域のタンデム化の効果を評価した。まず、2リピートのタンデムにしたGSK3バイオセンサーペプチド領域を高輝度発光タンパク質Nano-lantern (Takai et al., PNAS 2015)のN末側またはC末側に融合し、Tol2トランスポゾンシステムを用いて3T3細胞に遺伝子導入した。次に目的のGSK3バイオセンサーを安定発現する細胞株を選抜し、Wnt刺激下における発光強度の増大をWntシグナル応答性として評価した。その結果、1リピートの場合と比較してWnt応答性が改善したバイオセンサーが得られた。しかしながらGSK3バイオセンサーの種類によっては安定発現株が得られない場合もあり、タンデム化によりWnt応答性が改善するかどうかはGSK3バイオセンサーの種類に依存する可能性が示唆された。 次に、前年度に開発したGSK3バイオセンサーに加え、KTR (kinase translocation reporter)作製法をベースに新たなGSK3バイオセンサーを作製し、そのWntシグナル応答性を解析した。その結果、前年度に作製したGSK3バイオセンサーよりもさらにWnt応答性の良いバイオセンサーを得ることができた。さらにWnt刺激化における各バイオセンサーの核内外の局在変化を1細胞蛍光イメージングにより解析し、これらGSK3バイオセンサーのKTRとしての活性を検討した。今後はこれらの改良型βカテニンリン酸化動態可視化プローブを用い、スプリットルシフェラーゼ技術をNano-lanternに応用するなどの工夫によりさらなるS/Nや感度の改善を図りながら研究を進めていく予定である。
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