研究課題/領域番号 |
15K21629
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岡本 和子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 特別研究員 (40710265)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | PALM / FRET / ヒストン修飾 / 未分化 / リプログラミング |
研究実績の概要 |
本研究は、光活性化位置推定顕微鏡法(PALM法)とFRETを融合させた機能的超解像法を確立し、未分化細胞からの分化過程・および分化細胞からのリプログラミング過程での核内ヒストンの修飾と位置情報を同時に取得し、修飾の増減および空間分布変化を計測することを目的としている。分化とリプログラミングはまるで、ビデオの正流(再生)と逆流(逆再生)のような振る舞いなのか。細胞分化・リプログラミングのランドマークとなりえる、ヒストン修飾を指標とし、この問題を明らかにする。ヒストン修飾は近傍にあるクロマチン構造の変化をもたらし、その結果としてグローバルな遺伝子発現が変化すると考えられている。新規開発技術によって、ヒストン修飾とヒストンそのものの核内空間情報を、同時に獲得することができる。ヒストン修飾は、上述の細胞分化・リプログラミングのみならず、がん化を含む病態への関与が明らかであるが、そのダイナミクスは未だ不明なままである。 そのため、本研究で開発する機能的超解像法は多くの生命現象解明の糸口として使用可能な技術となりえる。 本研究では、ヒストンH4K5 アセチル化検出プローブHistac(Sasaki et al., 2009)を、PALM法に適応することで、30 nm 程度の精度の空間情報の取得を可能にする。またヒストン修飾とクロマチンの空間的不均一性の相関を可視化し、上述の問題を明らかにしようとするものである。 平成27年度は、手法の確立を予定通りに達成できており、平成28年度は、ES細胞およびiPS細胞等を使用し、分化・リプログラミング過程での計測を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、平成27年度にFRETプローブHistacを、光活性型GFPと蛍光色素の組み合わせにより、PALM法に適応することに成功している。しかしながら、当初の計画であった、二波長分岐でのFRET効率の計測は、モデル細胞内に取り込まれた遊離蛍光色素の漏れ込みが多かったため、代替としてブリンキングの激しい有機蛍光色素を使用することによって、光活性型GFPの蛍光強度のみを計測する一波長FRET計測によって、手法をほぼ確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでモデル細胞(HeLa細胞)などを使用し、PALM-FRET手法の確立としてきた。平成28年度はES細胞およびiPS細胞等を使用し、分化・リプログラミング過程での計測を行う。また現在計測に使用しているプローブ以外の修飾検出プローブも使用し、同様の計測を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養にかかる人件費・謝金を支出する必要が無かったため。また未分化細胞等、複数種類の細胞の同時使用を考えていたが、結果として培養しやすい細胞種2種のみの使用となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
未分化細胞の培養にかかる、人件費・謝金および培地等の物品費を多く支出する予定である。
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