研究課題/領域番号 |
15K21637
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
寺島 孝明 科学警察研究所, 交通科学部, 研究員 (70623354)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 交通事故 / 幼児同乗自転車 |
研究実績の概要 |
研究初年度である平成27年度には、幼児同乗自転車の関わる交通事故の実態を明らかにするために、警察庁交通局によって集約されている交通事故統計データベースを用いて分析を行った。分析の結果、幼児同乗自転車の関わる交通事故により、年間1000人程度の自転車同乗幼児が死傷していることが明らかとなった。事故にあった幼児同乗自転車の運転者は20歳代、30歳代の女性が多くを占めており、幼児同乗自転車の運転者の多くはヘルメットを着用していなかった。一方で、事故により死傷した自転車同乗幼児のヘルメット着用率は年々増加傾向にあり、近年は約4人に1人が着用していた。幼児同乗自転車の関わる交通事故の相手は約8割が普通自動車、軽自動車であり、自動車の危険認知速度は20km/h以下が多く、低速度域における事故が多くを占めていた。幼児同乗自転車の関わる交通事故の状況としては、出会い頭事故、交差点での事故が多いなどの一般の自転車の関わる事故と同様の傾向が認められた。幼児同乗自転車乗員の傷害状況としては、多くの運転者・同乗幼児が路面との接触・衝突により傷害を負っており、運転者は主に脚部や腕部、同乗幼児は主に頭部に傷害を負っていた。 また、幼児同乗用自転車の市場調査を行い、自転車の形状、タイヤサイズ、幼児用座席の取付け位置、幼児用座席の形状等についての知見を収集した。 以上より得られた、日本における幼児同乗自転車の交通事故の実態と市場における幼児同乗用自転車の傾向を基にして、交通事故時における自転車同乗幼児の傷害状況把握のための実車衝突実験の条件の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度である平成27年度における主な研究計画は、「幼児同乗自転車の交通事故実態の把握」と「実車衝突実験の準備」の2つであり、ともにおおむね計画通り実施した。 「幼児同乗自転車の交通事故実態の把握」については、交通事故統計データベースを用いることでマクロ的に調査を行い、幼児同乗自転車の交通事故の特徴を明らかにすることで、計画通り交通事故実態を把握した。 「実車衝突実験の準備」については、交通事故統計データベースを用いた調査により、多く発生している事故の状況を明らかにし、衝突形態、衝突速度等の実験条件の検討を行うとともに、自転車同乗幼児の頭部加速度を計測するために必要な実験機材の購入手続きを行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見を基にして、人体ダミーを搭載した幼児同乗自転車と自動車の実車衝突実験を実施する。衝突形態、衝突速度等の条件を変えながら複数回の実験を実施し、自動車、自転車、自転車乗員の挙動について高速度カメラにより衝突映像を収集する。また、自転車同乗幼児ダミーの頭部加速度、衝突により生じた車両の変形、車両や路面に残された痕跡等の各種データを収集する。得られたデータを解析し、幼児同乗自転車の事故に適した交通事故調査技術、自転車同乗幼児の受傷過程、頭部傷害について検討を行う。また、引き続き、交通事故統計データの分析を行い、交通事故実態の把握に努めるともに、交通事故に関する各種の知見を収集する。適宜、研究成果をまとめて学会発表等を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において、実車衝突実験時に人体ダミーの頭部加速度を計測する装置である衝撃試験用計測機器は最も経費のかかるものであり、研究を行う上で必要不可欠なものである。そのため、経費を執行するにあたり衝撃試験用計測機器の購入を優先して行い、実験消耗品等の購入、調査・情報収集等のための旅費等については優先順位をつけて残金を執行することで、効果的な経費執行を計画している。 平成27年度において、計画通り衝撃試験用計測機器の購入を優先し、早期に仕様を決定して入札等の準備を行ったが、事務担当者の作業が年度末までかかってしまったため、契約を行い、納入を待っている状況である。また、衝撃試験用計測機器の契約が年度末となってしまったため、残金にて執行予定であった実験消耗品の購入等が行えず、次年度使用額が生じている。ただし、実験消耗品については滞りなく購入できる見込みであることから研究計画には大きな支障はない。
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次年度使用額の使用計画 |
衝撃試験用計測機器については前年度に契約を行っており、現在は納入を待っている状況である。平成28年度においては、当初の研究計画通り、実車衝突実験のために実験消耗品である幼児同乗用自転車、幼児用座席、自動車等の購入を行う。なお、自動車については中古車を用いて費用の圧縮を行う。また、交通事故や自転車に関する情報収集のために書籍等の購入、学会等への参加旅費などに使用する計画である。
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