研究課題/領域番号 |
15K21637
|
研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
寺島 孝明 科学警察研究所, 交通科学部, 研究員 (70623354)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 交通事故 / 幼児同乗自転車 / 衝突 / 頭部傷害 / 自動車 |
研究実績の概要 |
研究の2年目となる平成28年度には、自動車と人体ダミーを搭載した幼児同乗自転車の実車衝突実験を実施した。交通事故統計データを用いた分析の結果、出会い頭事故が多く発生していたことから、自転車の左側面に自動車の前面が衝突する事故を再現した衝突実験を行った。自転車には成人女性を模擬した人体ダミー(Hybrid-Ⅲ AF05、以下では大人ダミーとする)を乗車させるとともに、リアキャリアに設置した幼児用座席には3歳児を模擬した人体ダミー(Hybrid-Ⅲ 3YO、以下では幼児ダミーとする)を乗車させた。自動車はセダン型の普通乗用自動車を用いて、衝突速度は30km/hとし、自転車との衝突直後に制動させた。幼児用座席に装備されたシートベルトの装着状況および自転車の速度を変化させて複数回の実験を行った。幼児ダミーの頭部内に加速度センサを設置し、衝突時に頭部に発生した加速度を計測するとともに、衝突状況を高速度ビデオカメラ等により撮影し、車両や路面に印象された痕跡等を収集して、知見の蓄積を行った。 実験の結果、大人ダミーおよび幼児ダミーは自動車のボンネットに頭部を衝突させ、その後、路面へと投げ出された。幼児ダミーがシートベルトを着用していなかった場合、自動車との衝突により、幼児ダミーは大人ダミーとともに自転車から投げ出された。一方、幼児ダミーがシートベルトを着用していた場合、大人ダミーは自動車との衝突により自転車から投げ出されたが、幼児ダミーは衝突後も幼児用座席に着座した状態であった。幼児ダミーの頭部内に発生した加速度には、頭部が自動車のボンネットおよび路面に衝突した時にピークが観察され、ボンネットとの衝突時に比べて路面との衝突時において頭部へ大きな加速度が発生していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度における主な研究計画は、幼児同乗自転車と自動車の実車衝突実験であり、おおむね計画通り実施することができた。条件を変えて複数回の実験を実施し、自動車、自転車、自転車乗員の挙動、自転車同乗幼児ダミーの頭部加速度、衝突により生じた車両の変形、車両や路面に残された痕跡等の各種データを収集した。得られたデータを解析し、幼児同乗自転車の事故に適した交通事故調査技術、自転車同乗幼児の受傷過程、とくに頭部傷害について検討を行った。 また、警察庁交通局によって集約されている交通事故統計データベースを用いて、幼児同乗自転車の関わる交通事故の特徴を分析し、雑誌への投稿を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見を基にして、引き続き幼児同乗自転車と自動車の実車衝突実験を実施する。衝突形態、衝突速度、幼児ダミーの乗車位置等の条件を変えながら複数回の実験を実施し、自動車、自転車、自転車乗員の挙動について高速度ビデオカメラにより衝突時の状況を撮影するとともに、幼児ダミーの頭部加速度、車両や路面に残された痕跡等について更なる知見の蓄積を行う。得られたデータを解析し、幼児同乗自転車の事故に適した交通事故調査技術の確立を目指す。また、自転車同乗幼児の受傷過程、特に頭部傷害について検討を行う。平成29年度が研究最終年度であることから、研究成果をまとめて学会発表、論文投稿を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、交通事故時の自転車同乗幼児の傷害状況を詳細に検討するため、実車衝突実験を行うことが必要不可欠である。実験では、自転車や幼児用座席(幼児ダミーの乗車位置、ヘッドレストの有無)の種類等の条件を変更して検討を行う必要があるが、あらゆる条件を網羅的に行うことは金銭的、時間的に困難であることから条件の絞り込みが必要である。条件を効果的に絞り込むために衝突実験を複数回実施して解析を行い、その結果を基に次の実験条件を決定して自転車等の購入を行うことから、実験に時間がかかるため次年度使用額が生じている。また、次年度が研究最終年度であることから、研究成果の発表にかかる費用が生じている。
|
次年度使用額の使用計画 |
実車衝突実験のために幼児同乗用自転車、幼児用座席等の実験消耗品の購入を行う。また、研究最終年度となることから、研究を取りまとめて国内外の学会で発表を計画しており、参加費・旅費などに使用する予定である。
|