研究の最終年度は、引き続き自動車と人体ダミーを搭載した幼児同乗自転車の実車衝突実験を実施した。衝突形態としては出会い頭事故および追突事故を模擬し、自転車には成人女性を模擬した人体ダミー(Hybrid-Ⅲ AF05、以下では大人ダミーとする)を乗車させるとともに、ハンドル付近またはリアキャリアに設置した幼児用座席には3歳児を模擬した人体ダミー(Hybrid-Ⅲ 3YO、以下では幼児ダミーとする)を乗車させた。自動車はボンネット車を用いて、衝突速度は約20~30 km/hとし、自転車との衝突直後に制動させた。幼児用座席の種類、幼児用座席に装備されたシートベルトの着用状況などを変化させて複数回の実験を行った。幼児ダミーの頭部内には加速度センサを設置し、衝突時に頭部に発生した加速度を計測するとともに、衝突状況を高速度ビデオカメラ等により撮影し、車両や路面に印象された痕跡等を収集して、知見の蓄積を行った。 最終年度までに実施した実験の結果をまとめると以下のとおりである。 多くの実験形態で大人ダミーおよび幼児ダミーは自動車のボンネットに頭部を衝突させ、その後、路面へと投げ出される挙動となった。幼児ダミーは、シートベルト非着用の場合、自動車との衝突により大人ダミーとともに自転車から投げ出された。一方、シートベルト着用の場合、大人ダミーは自動車との衝突により自転車から投げ出されたが、幼児ダミーは衝突後も幼児用座席に着座した状態で自転車と一体となって投げ出された。 幼児ダミーの頭部には自動車のボンネットおよび路面に衝突した時に大きな加速度が発生しており、特に路面との衝突時により大きな加速度が発生していた。また、路面への落下の挙動次第ではシートベルトの着用やヘッドレストの存在により頭部への衝撃が軽減される可能性が示唆された。
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