本プロジェクトは、ミャンマーの最大都市ヤンゴンがイギリス帝国の植民地都市から国民国家ミャンマーの首都へと変貌する過程を実証的に研究することを目的とする。対象時期は、植民地期末期の1930年代から日本占領期と1948年の独立をはさんで、社会主義軍事政権が成立する1960年代までである。 プロジェクトの期間を1年延長し、5年目の最終年度となる令和1年度は、前年度から引き続き、1950年代から1960年代にかけてのヤンゴンの企業住所録のデータ入力作業を進めると同時に、前年度までに入手した資料の読解を進めた。具体的には、①ヤンゴンのミャンマー国立文書局で入手した独立後の行政文書(ヤンゴンの大規模市場スーラティ・バザールの国営化に関する文書など)と、②イギリスの大英図書館などで入手した、1940年代半ば、アジア・太平洋戦争と日本の侵攻にともなうミャンマー(ビルマ)からのインド人や華人の大規模な流出や、日本敗退とイギリスによる再占領にともなって発生した大量の帰還民をめぐる問題に関する植民地行政文書など、である。 成果物としては、丸善出版から刊行された『東南アジア文化事典』に、「都市の世界」および「デルタの世界」という二つの項目を執筆・寄稿した。
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