研究実績の概要 |
病原性真菌Cryptococcus gattiiによるクリプトコックス症は、近年北米を中心に集団感染が報告され、非免疫不全者の死亡例も報告されている。北米流行型C. gattiiは、感染時に殆ど免疫応答を誘導しないために感染後に得られる情報が少なく、感染制御機構は不明であった。本研究では、本菌に対する感染制御機構を明らかにする目的で、樹状細胞(DC)ワクチンを開発し、その感染制御効果と作用機序を検討した。 DCワクチン投与群では感染後の臓器内菌数や生存率は有意に改善した。DCワクチン投与群の肺では、IFNγ, IL-17A, TNFαの産生が有意に増加し、病理解析の結果、菌体を封入する多核巨細胞の形成も認めた(Ueno et al., Infect Immun, 2015, Ueno et al., Meth in Mol Biol, 2016, in press)。その後の解析で、サイトカイン産生を伴う感染制御効果は、DCワクチン投与2-7ヶ月経過後に感染させた場合も同様に観察され、この感染制御効果の持続性は、感染前の肺で長期間観察される組織常在性CD4+記憶型T細胞 (Lung CD4 TRM)の増加と相関しているように見えた。Lung CD4 TRMは、近年特定された新規サブセットであり、生理学的機能は十分に理解されていない。2015年度は、Lung CD4 TRMの特徴的なマーカープロファイル/サイトカイン産生性を明らかにし、分化制御・長期維持を理解する上で重要な知見を得た。また、末梢循環型T細胞を枯渇させる免疫抑制剤 FTY720の投与では、Lung CD4 TRMは減少しないことが示され、DCワクチンによる感染制御効果もFTY720の投薬では減弱しないことも明らかになった。この結果は、Lung CD4 TRMが感染制御に関与することを示唆している。
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