研究課題
高度病原性真菌Cryptococcus gattiiは、クリプトコックス症の原因菌である。本菌に対する生体防御機構は十分に理解されていない。本研究では、本菌に対する感染制御機構を解明する目的で、樹状細胞 (DC)ワクチンを独自に開発し、その感染制御効果と作用機序を解析した。マウス骨髄由来のDCにC. gattii莢膜欠損株の熱処理死菌を取り込ませてDCワクチンとし、感染前に14日間隔でマウスに2回静脈内投与した。次いでこのマウスに北米流行株R265を経気道感染させ、感染マウスの生存率や臓器内菌数を評価した。感染前後にける各種白血球のプロファイルは、フローサイトメトリーにて解析した。移入したDCは肺に集積し、肺常在性記憶型Th17細胞 (Lung TRM17)を誘導した。Lung TRM17は免疫抑制剤FTY720で枯渇しない血管内染色陰性の集団であり、抗原再刺激に応答してIL-17Aを産生した。DCワクチン投与群では感染後の肺内菌数や生存率は有意に改善し、肺内におけるIL-17A産生も有意に増加した。この感染制御効果には持続性があり、Lung TRM17の長期維持と相関していた。さらに、FTY720投薬下でもDCワクチンによる感染制御効果は同様に観察されたが、IL-17A欠損マウスではその効果は有意に減弱した。感染7日目において、野生型マウスではDCワクチンの投与により好中球の有意な増加を認め、感染14日目の肺病理像では、菌体増殖を抑制するような多核巨細胞の形成が観察された。IL-17A欠損マウスでは、DCワクチンによる好中球の増加を認めなかった。性状解析の結果は、Lung TRM17が新規記憶型T細胞であることを示唆している。また感染実験の結果は、高病原性肺クリプトコックス症の感染制御にLung TRM17が寄与することを示唆している。
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