研究課題
本研究の目的はSFTSVのリバースジェネティクス方法(遺伝子操作系)を整備し、これを用いてレポーター遺伝子を挿入した組換え SFTSV を作製しハイスループット抗ウイルス薬スクリーニングシステムを開発すること、SFTSに対する有用な治療薬を探索すること、そして本ウイルスの病原性発現機構の解明に向け構成蛋白質の機能解析を行うことである。平成27年度ではSFTSVの遺伝子操作系の構築を試み、また、ミニゲノム法を用いて本ウイルスのL蛋白質の機能解析を行った。遺伝子操作系に関してはポリメラーゼIを用いた系では感染性粒子を得ることができず、現在T7ポリメラーゼを用いた系を検討している。また、ハイスループット抗ウイルス薬スクリーニングシステムに適切な遺伝子操作系を得ることができなかった場合に備え、ミニゲノム法を用いたハイスループット抗ウイルス薬スクリーニングシステムの確立を検討している。本系ではウイルス遺伝子の転写複製阻害薬のスクリーニングが可能である。ミニゲノム法を用いたSFTSVのL蛋白質の機能解析に関しては、50代培養継代し性状変化が観察されたウイルスにおいて変異が見られたアミノ酸に関して変異を導入、ミニゲノム法でL蛋白質の転写複製効率の変化を野生型と比較検討した。その結果、変異が見られたアミノ酸置換による転写複製効率の変化は観察されなかったが、本ウイルスは野生型と比較してVero細胞で非常に高い増殖効率を保持していた。現在他に変異が観察された膜糖蛋白質における変異部位について解析中である。構成蛋白質の機能解析に関しては今後その他に核蛋白質、L蛋白質の相互作用に関して、N蛋白質の機能解析等を行っていく予定である。
3: やや遅れている
SFTSウイルスの構成蛋白質に関する機能解析に関しては順調に進捗しているが、抗ウイルス薬スクリーニングに関しては平成27年度に開始できなかったことからやや遅れていると考えられる。
ミニゲノム法を用いたハイスループット抗ウイルス薬スクリーニングシステムの確立を目指す。すでにウイルスの転写複製に対し阻害効果を示す化合物をミニゲノム導入細胞に添加するとレポーター蛋白質の発現が低下することが観察されていることから、今後本系をよりハイスループットに実施可能な系に条件検討していく予定である。また、引き続き、構成蛋白質のひとつである膜糖蛋白質の性状解析を行うと同時に、核蛋白質、L蛋白質の相互作用、核蛋白質の機能解析等をミニゲノム法を用いて行っていく予定である。
初年度から計画していた抗ウイルス薬スクリーニングが、遺伝子操作系の確立の遅れで実施できなかったため、化合物ライブラリーの購入を控えた。
抗ウイルス薬スクリーニングを行うための化合物ライブラリーの購入に用いる。また、必要に応じてマウス、プラスチック実験用品、試薬等の購入に用いる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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