研究課題/領域番号 |
15K21645
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
谷口 怜 国立感染症研究所, ウイルス第一部, 研究員 (60734465)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミニゲノム法 / SFTSウイルス / ハートランドウイルス |
研究実績の概要 |
本研究の目的はSFTSVのリバースジェネティクス法(遺伝子操作系)を整備し、これを用いてレポーター遺伝子を挿入した組換え SFTSV を作製しハイスループット抗ウイルス薬スクリーニングシステムを開発すること、SFTSに対する有用な治療薬を探索すること、そして本ウイルスの病原性発現機構の解明に向け構成蛋白質の機能解析を行うことである。 平成28年度では平成27年度に引き続きSFTSVの遺伝子操作系の構築を検討した。昨年度の研究実績概要で触れたT7ポリメラーゼを用いた系の検討を行ったが、ポリメラーゼIの系同様、感染性のウイルス粒子を得ることはできなかった。その影響もあり抗ウイルス役の探索は現在行っていない。ウイルス蛋白質機能の解析として以下のことを行った。まず、SFTSVと遺伝的に近縁であるハートランドウイルス(HRTV)のミニゲノム系を確立した。次に本系を用いてSFTSVとHRTV間でのN蛋白質の機能解析を行った。その結果、245アミノ酸で構成されるSFTSVとHRTVのN蛋白質は、アミノ酸同一性が62%であり、そのN末端側143アミノ酸は転写複製機能に関して種間で互換性がないが、C末端側102アミノ酸は互換性が認められた。また、これらの部位を置換したN蛋白質でL蛋白質との結合性が変化しないことから転写複製機能への影響はN-Lの結合性以外の要素に起因することが明らかとなった。今後さらなる機能部位の同定、さらには蛋白質の種間での互換性の可否をリアソータントを作製して行っていく予定である。 また、ミニゲノム法及び膜糖蛋白質(Gn/Gc)発現プラスミドを用い培養細胞で連続継代したSFTSVに見られるアミノ酸変異について解析した。その結果Gn/Gcの962番目のアミノ酸のセリンからアスパラギンへの置換がウイルス増殖、細胞融合活性に影響を及ぼすことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SFTSVのリバースジェネティクス法(遺伝子操作系)の確立に成功していない。そのため、抗ウイルス薬探索は行っておらず、進捗はやや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
SFTSVとハートランドウイルス(HRTV)の構成蛋白質の比較解析を軸に、蛋白質間相互作用の解析をおこなう予定である。SFTSVのリバースジェネティクス法の確立が達成できない現状、ミニゲノム法とSFTSV、HRTVのリアソータント作製を行うことで研究を進めていく。実際にはN, L蛋白質の機能解析はSFTSVとHRTVのキメラ蛋白質を作製、ミニゲノム法でその転写複製機能の変化をレポーターアッセイで測定する。また、SFTSVとHRTVを細胞に共感染させることで、二種間でのリアソータントを作出する。作出したリアソータントの病原性を比較することで、膜糖蛋白質の病原性への関与も明らかにしていく予定である。また、ミニゲノムを用いてウイルス遺伝子の転写複製機能を阻害する化合物の探索を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
リバースジェネティクス法の確立がおくれているため、抗ウイルス薬スクリーニング用の薬剤ライブラリを購入していない。そのため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
リバースジェネティクス法の確立に成功しレポーター蛋白質を持った組換えウイルスの作製に成功した場合、薬剤ライブラリを購入する。また、成功しなかった場合、蛋白質機能の解析として作製予定であるリアソータントウイルスの病原性解析のための動物実験用マウスの購入、消耗品購入に充てる。
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