研究課題
本年度では研究計画に則り、以下の通り解析を実施した。①癌関連線維芽細胞 (CaF)、非癌部線維芽細胞(NF)それぞれから遠心法を用いてExosomeを回収後、Nano SightによるExosome粒子数のカウントやProtein assayによるタンパク質量を検討し、実際にExosomeが回収されているかどうかを確認する。②Exosomeマーカーとして知られるCD9、63、81の発現を、ウエスタンブロット法により確認する。③NF、CaF由来のExosomeを胃癌細胞株に処理し、Exosomeを処理しない群と比較して胃癌細胞株内外の乳酸産生量、グルコース消費量などの変化を検討する。④ NF、CaF由来のExosomeを対象にmiRNAマイクロアレイを用いた網羅的発現解析を行い、NFと比較してCaF由来のExosomeで発現の高いmiRNAをピックアップする。その結果、①超遠心により得られたExosome Fractionについて、Nano Sightを用いた粒子測定などによる解析を行ったところ、NF、CaF共にExosomeを分泌していることが分かった。②各Exosome Fractionから、ExosomeマーカーであるCD9、CD63、CD81の発現が確認された。③NF、CaF由来のCMおよびExosomeをスキルス胃癌細胞に処理した際、胃癌細胞の培養上清の酸性度が亢進した。このことから、線維芽細胞由来のExosomeにより胃癌細胞内の代謝変化、特に乳酸合成経路が誘導されたことが示唆された。④各線維芽細胞由来のExosomeを用いたマイクロアレイの結果、NF由来のExosomeと比較してCaF由来のExosomeで有意に発現が亢進したmiRNAを複数同定した。現在、これらmiRNAの発現変化により、胃癌細胞内の乳酸経路活性化に寄与する分子を解析である。
2: おおむね順調に進展している
研究計画書に記載した項目のうち、各線維芽細胞由来のExosomeを処理した胃癌細胞内部の詳細なメタボローム解析や、標的遺伝子候補予測のためのマイクロアレイ解析などが行えていないが、現在メタボローム解析については解析委託企業と解析内容の相談中であることに加え、CaF由来のExosome内部に豊富に含まれていたmiRNAの標的予測を行うことで、ある程度候補遺伝子はピックアップ可能であると予想される。そのため、研究計画書内の実験を全て年度内に完了できなかったものの、全体の研究進行度としては概ね順調に進展しているものと考えられた。
現在、不死化したCaF, NFを用いて、恒常的にExosomeの分泌が阻害される線維芽細胞株を作成中であり、今回Exosome処理により見られた胃癌細胞内での代謝変化を、共培養環境下でも確認可能かどうか検討中である。これにより、今回見られた現象が、より生理条件に近い状態で確認されるものかどうか確認する。また、今回miRNAアレイにより得られたmiRNAシーズがどのような遺伝子を標的としているか、またこれら標的候補遺伝子内に胃癌細胞内の代謝変化に関連するような遺伝子候補が無いかを検索する。これらmiRNA標的候補遺伝子に対する強制発現系/Knock down系を作成し、代謝変化への影響を確認することで、Exosome内部に含まれていたmiRNAの癌細胞への影響をより詳細に検討する予定である。また同時に、スキルス胃癌の腹膜播種モデルを用いた検討もすでに開始しており、来年度内には一定の成果が得られる予定である。
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