研究課題
本年度では、研究計画に則り、以下の通り解析を実失した。 癌関連線維芽細胞 (CaF)、非癌部線維芽細胞 (NF) から単離したExosomeを胃癌細胞に処理し、Exosomeを処理しない群と比較して胃癌細胞内外の乳酸量、グルコース消費量について検討を行った。しかしながら、Exosome処理による胃癌細胞内の乳酸量などの顕著な変化が認められなかった。原因としてExosome処理時間や処理量などの影響も考えられるが、少なくとも今回検討した条件下ではCaF由来のExosomeによる胃癌細胞の代謝への影響を確認できなかった。そこで方針を転換し、胃癌細胞と線維芽細胞の相互作用によって双方の細胞内部の代謝変化が生じるのかどうか全体像を明らかとするため、胃癌細胞と線維芽細胞の共培養系を確立し、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、より転移能の高いスキルス胃癌細胞株は、線維芽細胞内部の遺伝子発現プロファイルを大きく変化させることがわかった。さらに、スキルス胃癌細胞株と線維芽細胞の共培養により、両細胞内のグルコースの嫌気的代謝経路の関連遺伝子の発現が亢進し、一方で電子伝達系関連遺伝子の発現が低下していた。つまり両者の共培養により、本来癌細胞内でしか亢進しないはずのワールブルグ効果が、共培養後の線維芽細胞側でも生じており、これがスキルス胃癌で特に亢進することを意味している。さらに、この線維芽細胞内部の代謝変化が、癌細胞由来のExosomeで生じている可能性を示唆する結果が得られている。以上から、申請者の当初の仮説とは逆に、癌細胞由来のExosomeが癌微小環境中の代謝変化に重要な機能を果たしている可能性がある。今後、胃癌細胞内部Exosome内部にどのような分子が含まれているか、miRNAアレイ解析やプロテオーム解析、メタボローム解析などを駆使して検討する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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