研究実績の概要 |
本研究はカルボニルストレスに関連する分子の挙動と認知機能、及び臨床症状の経過を縦断的に追跡することで、カルボニルストレス性統合失調症における認知機能障害のメカニズムを明らかにすることを目的とした。第1回目の認知機能検査が終了した時点で、転帰によって被験者を3群に分けた。第1群は予後良好群(入院から外来となった者)、第2群は予後悪化群(外来から入院となった者)、第3群は予後変化なし群(入院のまま、外来のまま)として解析を行った。 平成26年度は新規症例に対するa)認知機能検査、b)精神症状評価、c)カルボニルストレス関連分子の血中濃度の測定を行った。また、すでに第1回のa)~c)が終了している被験者に対して第2回目のa)~c)を実施した。その結果、ある症例において予後が入院から外来通院へと変わり、カルボニルストレス関連分子であるペントシジンが48%低下し、さらにカルボニル化合物代謝経路に関連しているホモシステインが20%低下、葉酸は11%増加していた。WAIS-IIIを用いた認知機能検査では全般的にIQの上昇を認めた。特に、言語能力や視覚認知課題において得点の上昇が示された。その一方で前頭葉機能検査として用いたWCSTの成績は低下傾向を認めた。Manchester Scaleによる精神症状評価については大きな変化はなかった。 この症例において認められた視覚認知とペントシジンとの関連については、我々が行ったpreliminaryな研究結果(小堀ら, 投稿準備中)とも一致している。このことから、カルボニルストレスと認知機能障害との関連が予測された。
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