研究課題
アレルギー性皮膚炎(以下アトピー性皮膚炎)患者は、日本を含めた先進国の子供約15-30%、大人約2-10%を占め、近年さらに増加傾向にある。Thymic Stromal LymphoPoietin (以下TSLP)は、アレルギー性皮膚疾患の発症開始に重要であると多数報告があるが、慢性期の炎症におけるTSLPの役割は十分に解明されていない。そこで皮膚炎の慢性期におけるTSLPの役割を明らかにするために、慢性期になるとTSLPに依存して炎症が増悪化する皮膚炎モデルと、最初の抗原刺激による炎症応答からTSLPに依存する皮膚炎モデルを構築して解析をおこなった。どちらのモデルにおいても、慢性期の炎症時にTSLPレセプター(TSLPR)を欠損するマウスでは、マウス耳介に誘導した慢性期の炎症応答の減少が確認された。この結果は、慢性期においてTSLPが炎症増悪化に重要な役割を果たしていることを示唆している。さらに樹状細胞やCD4細胞のみでTSLPRを欠損させたマウスでも炎症反応の減弱が観察された。この新規マウスを使用して得られた結果は、TSLPの標的細胞としてこれまで考えられてきた樹状細胞のほかに、新たにCD4細胞の存在を提唱している。さらにCD4細胞がTSLPの標的細胞であることを確認するためには、細胞移入実験等による炎症の増悪化反応などの確認が必要である。またTSLPレポーターマウスの解析から樹状細胞や単球系細胞からのTSLP産生も確認された。まとめると、慢性期の皮膚炎症の局所では、樹状細胞などから産生されるTSLPをCD4細胞が受け取り、起こっている炎症をさらに増悪化できる病原性CD4細胞へ変化させている可能性が示唆された。今回の得られた結果は、慢性期の炎症局所における免疫細胞間相互作用を介した炎症増悪化メカニズムの解明に繋がることが期待される。
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The Journal of Cancer Gene and Cellular Therapies
巻: - ページ: -
10.1038/cgt.2017.2
The Journal of Immunology
巻: 197 ページ: 2269-2279
10.4049/jimmunol.1502486