研究課題/領域番号 |
15K21650
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 泉美 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (20726971)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 医療情報データベース / 精神科系薬剤 / がん |
研究実績の概要 |
本研究は全国レベルの医療情報データベースを用いて,乳がん患者の実診療下での精神疾患の罹患状況の解明と医療経済評価,及びその際の統計的手法を検討することである。本研究は,乳がんだけでなく他の7つのがん(胃がん,大腸がん,子宮がん,前立腺がん,肺がん,肝がん,膵臓がん)を含める事で乳がん患者の精神疾患の罹患状況の比較可能性を高めた。昨年度には,研究実施の承認を京大の医の倫理員会から受けており,当該の研究計画書を元に対象患者を含むデータを入手し,解析を終了させた。 解析の結果により,約半数のがん患者が精神科系薬剤の処方を受けており,さらに,そのほとんどがベンゾジアゼピン系の薬剤であった事がわかった。また,その処方はがんの診断を受けた後の早い段階で処方されていた。また,がん診療拠点病院では若干その精神科系薬剤の処方割合が少ない傾向にあった。がん診療拠点病院と一般病院とでは,がん患者のメンタル疾患に対する薬物療法の提供状況が同様ではない可能性が示唆された。 本年は解析,論文作成を完了させており,8月に開催された”32st International Conference on Pharmacoepidemiology & Therapeutic Risk Management, 2016”にて,以下の標題でポスター発表を実施した。“Psychotropic Medication Use in Patients with Eight Major Cancers in Japan: A Retrospective Descriptive Study Using a Health Insurance Claims Database.” さらに,本研究は論文作成・投稿済みであり,Psycho-oncology誌でメジャーリビジョンのため,再投稿を実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
乳がん患者の精神疾患の罹患状況の解明のため,他のがん患者を含めた研究に拡張させたため,データハンドリングや解釈等で時間を要してしまった。また,本研究結果の成果として学会発表は実施できたが,論文作成にも時間を要してしまい,採択までの時間が掛かっている。学会発表,論文投稿を優先させていたため,乳がん患者の経済評価に関しての評価が遅れている。雑誌社の返答を待つ間に,経済評価のための資料検索を実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在,投稿中の論文を雑誌社に採択させるまで尽力する。その間に,経済評価のための資料準備を開始した。当初の計画の乳がん患者のみから8大がんに拡張させているが,経済評価は乳がん患者に限定して進めている。既存の公表されている乳がん患者あるいは精神疾患患者に要する医療費の情報を用いる事と,さらにアンケート調査によって費用計算に影響する因子を探索する事を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
乳がん患者から他のがんまで拡張させて検討したこともあり,解析,結果のまとめ,論文作成等の研究の進捗が遅れており,経済評価まで辿り着く事ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
経済評価のための費用計算に影響する因子を探索するためのアンケート調査実施や,これまでの結果を元に乳がん患者に限定して詳細な検討を実施するための情報収集,解析,論文作成・投稿を実施する。
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