研究課題/領域番号 |
15K21651
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
三村 喬生 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 微細構造研究部, 特別研究員 (60747377)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 行動神経学 / 計算モデル / 社会性 / 同調 / 霊長類 |
研究実績の概要 |
本研究は、小型霊長類コモン・マーモセットを対象に、リアルタイムの3Dモーションキャプチャ・システムを用いた時間遅延鏡デバイスを用い、社会的同調行動の定量的解析を目的としている。 研究1年目の平成27年度は、マーカーレス3Dモーションキャプチャ・システムの開発に取り組み、松本惇平助教(富山大学)との共同研究により、複数の深度カメラを同期させて測定したデータに対し、力学シミュレーションを用いた骨格推定により、頭・胴・腰の位置および頭部方向の検出が概ね可能となった。 研究2年目の平成28年度は、昨年度開発した骨格推定シミュレーションに加え、機械学習アルゴリズムを組み合わせる事で、頭部方向を高精度に3次元的に推定する改良を行った。合わせて実験環境と測定法のセットアップを最適化した。 これらを用い、時間遅延を加える前段階として、鏡を提示する行動試験を実施した結果、鏡に対する接近・注視および離脱の文脈を自由行動下で高分解能に測定する事に成功した。現在、得られた行動軌跡を定量的に分析する解析アルゴリズムの開発に取り組んでおり、平成29年度中の発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コモン・マーモセットのマーカーレス3Dモーション・キャプチャ技術の開発は、新規である。測定要件としては、背景がマーモセット身体(特に頭部)と区別できる色調である事、3方向以上からの深度カメラによる撮像が可能な事、測定範囲において赤外線を過度に屈折させる物が無い事の3点が挙げられるが、これらをクリアした環境であれば空間分解能0.3cm3, 時間分解能30frame/secの精度で定量的に行動をトラッキング可能となった。当該手法は、共同研究者の松本惇平(富山大)により、ラットおよびマカクサルにて実績の報告があるが、身体サイズに比して移動速度や身体自由度の高いコモン・マーモセットでは、これまでに無い。具体的には画像の機械学習を組み込む事で、精度の大幅な向上を達成した。 この技術を用い、マーモセットが新規に鏡を観察する場面を測定する事に成功し、注視に関わる行動文脈の解析が可能となった事から、研究全体としては概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
統計的検証を行うために十分数の鏡提示行動試験を継続して実施し、研究成果をまとめて国際学術誌にて発表する予定である。統計解析では、時系列連続量として得られる移動軌跡のパタンを抽出するため、ガウス過程などの教師なし機械学習の実装を予定する。測定技術面では、測定用深度カメラ(現在はMicrosoft Kinectを利用)を小型化する事で測定自由度の向上に取り組む(Intel社製の新開発カメラを検討中)。また、ソフトウェア環境やGUIを整備する事で、導入における技術的な敷居を下げる事に取り組む。十分に開発が進んだ場合、研究機関のサーバー上から自由に利用できるツールパッケージのβ版として外部からも利用可能となる環境を整備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究内容に関する国際学会の開催が次年度に行われ、これに参加・発表および関係者による打ち合わせが新たに予定として加わったため。また、この学会において得られた議論・コメントを元に研究成果を整理し、国際学会への論文投稿を予定しているため。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会への参加・発表の実施(35万円)および、論文投稿経費(英文校閲, 投稿費)として使用いたします。
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