本研究では、食事から摂取するω3系とω6系の多価不飽和脂肪酸(PUFA)の量比(3:6値)が、恐怖記憶の処理に関わる脳内神経回路でのシナプス伝達に与える影響について検討した。 その結果、3:6値の高い(ω3含量が多くω6含量が少ない)餌を食べたマウスでは、聴覚性恐怖記憶が有意に減弱するとともに、聴覚性恐怖神経回路を構成する聴覚野から扁桃体外側核への投射シナプスにおいて、興奮性シナプス伝達の長期増強が減弱していた。また、これらの行動・電気生理学的な変化はいずれもカンナビノイドCB1受容体を介して起こることも明らかとなり、PUFAによる情動調節の神経回路メカニズムが示唆された。
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