本研究は鉄製埋蔵文化財の製作地推定のための新しい手法の開発を目指し、ヒッタイト文明の本拠地中央アナトリア出土鉄器を用いた放射光高エネルギー蛍光X線分析を実施した。その結果、多くの資料からバリウムやランタンなどの重元素が検出された。さらにマッピング測定を行ったところ、これらの元素の製品内部での分布挙動が必ずしも一致しないことがわかった。これは、製作段階あるいは埋蔵環境での製品への混入過程が異なる可能性を示唆している。また、放射光X線マイクロCT測定もあわせて行い、非破壊での製品内部状態の観察の可能性を検討したところ、鍛冶技術の推定に役立つ非金属介在物分布についても十分な情報を得ることが出来た。
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