研究課題/領域番号 |
15K21660
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
伊藤 英臣 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究員 (70748425)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / メダカ / 魚類 |
研究実績の概要 |
ナショナルバイオリソース中核機関(新潟大学および基礎生物学研究所)において継代飼育されている4種の保存系統のメダカ(ラボメダカ)について、その腸内細菌叢を次世代シーケンサーを用いた16S rRNA遺伝子のPCRアンプリコンシーケンシング法によって調べたところ、どの系統においても腸内細菌叢の95%以上は3門の細菌群(Proteobacteria, Bacteroidetes, Firmicutes)で構成されていた。より詳細な分類群を調べたところ、Gammaproteobacteria綱のAeromonas属細菌がラボメダカ共通で腸内において最も優占していた。次に、関東、北陸、中国、九州地方の河川において採集した野生メダカの腸内細菌叢についても同様に調査したところ、ラボメダカよりも多様な細菌群で構成されており、ラボメダカではほとんど検出されなかったPlanctomycetes門、Verrucomicrobia門、Actinobacteria門の細菌群が高頻度に検出された。また生息地域によって腸内細菌叢の群集構造は大きく異なっており、どの野生個体にも共通して検出される細菌群の種類はラボメダカよりも少なく、それらが腸内細菌叢に占める割合も低かった。さらに、ラボメダカ共通に優占していたAeromonas属細菌は野生メダカの腸内ではほとんど検出されなかった。以上の結果から、①生息環境によって腸内細菌叢の群集構造は変動しやすいこと、②人工的な飼育環境では実環境中とは異なる腸内細菌叢が形成される可能性が高いこと、が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラボ飼育個体および野生個体の腸内細菌叢の多様性の解析を完了した。また、飼育水、河川水、底泥といった環境サンプルの細菌叢のシーケンスデータもすでに得られており、腸内細菌叢との比較解析が進行中である。さらに、異なる環境条件で飼育した個体の腸内細菌叢の比較についても、シーケンスデータは得られており、こちらも比較解析が進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに取得したシーケンスデータの解析を進め、環境要因による腸内細菌叢への影響調査を完了する。そして、当初の予定通り、宿主メダカの遺伝的要因が及ぼす腸内細菌叢への影響を明らかにする。さらに、異なる表現形質のメダカの腸内細菌叢を比較解析し、その原因となる細菌の単離および再感染実験系の構築を行い、腸内細菌の機能評価系モデルの提唱を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも外注分析サービスの利用頻度が低かったため余剰金が生じた
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次年度使用額の使用計画 |
前年度解析しきれなかったサンプルの外注分析費に使用する
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