研究実績の概要 |
本研究課題では、魚類腸内細菌叢の機能解明モデル開発に向け、優れたモデル魚類のメダカに着目し、その腸内細菌叢に関する基礎情報を得ることを目的とした。 まず、研究機関や小売店で室内飼育されているメダカと、日本各地の河川において採集した野生メダカの腸内細菌叢の群集構造を比較解析したところ、野生メダカと比べて、室内飼育メダカの腸内細菌叢の多様性は低くかった。また、細菌叢の構成メンバーを解析したところ、淡水魚の日和見病菌が含まれるAeromonas属、Pseudomonas属、Flavobacterium属細菌がどの室内飼育メダカにおいても優占していたのに対し、どの地域の野生メダカの腸内においてもそれらの細菌群はほとんど検出されなかった。これらのことから、環境要因によって腸内細菌叢は変動しやすく、人工的な飼育条件下では実環境中とは異なる腸内細菌叢が形成されることが示唆された。 次に、研究室で継代飼育しているメダカの、エラ、表皮粘膜、背ビレ、腸、腸内容物、そして卵の細菌叢を比較解析したところ、どの部位においてもAeromonas属およびCetobacterium属細菌が検出されたが、これらの構成比は体内外において大きく異なっていた。腸や腸内容物といった体内由来のサンプルにおいて、これら2属の細菌群が34.2-34.3%, 41.9-44.2%と高い割合を占めていた。一方、表皮粘膜、背ビレといった体表面においては、これら2属の細菌群の割合は相対的に低く、代わりに体内ではほとんど検出されなかったAcidovorax属細菌が18.5-24.1%と優占していた。さらに卵表面においては、Undibacterium,属、Rheinheimera属細菌といった水棲細菌が特異的に優占していた。これらのことから、メダカの各組織にはそれぞれ特異的な細菌叢が形成されることが示唆された。
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