研究実績の概要 |
最終年度では,研究実施者の所属組織異動に伴い,初年度に構築した国産人工衛星搭載合成開口レーダALOS/PALSARL1.0のアーカイブシステムを産業技術総合研究所知能システムに移築し,外部からもデータへのアクセスや利活用が可能となった. 研究期間を通して,PALSARによる日本沿岸域の海上風推定精度の検証を実施し,京都大学防災研究所所有の観測鉄塔による実測値との比較では,欧州の外洋におけるC-bandセンサによる既存論文の報告と同等の精度が得られた.一方で,神奈川県平塚市にある東京大学所有の観測鉄塔による実測値との比較では、衛星進行方向にアンビギュイティと言われる ノイズが多く発生し,海上風を過大評価することが分かった.これにより,大都市部の近くに位置する沿岸域での精度に課題が発見された. さらに、欧州の衛星搭載合成開口レーダSentinel-1を用いた海上風推定精度の検証を実施し, 一部の海域では既存のC-band合成開口レーダと同様の精度が得られたが,その精度は海域によって異なることも分かった. これらの研究により,合成開口レーダによる海上風推定では海域の地理的,気象学的な特性によって精度にばらつきがあることが明らかとなった.今後の研究の方向性としては,個別の精度低下の原因を解明するとともに,洋上風力発電に資する情報として大量データを統計値として利用する際に個別の精度がどの程度影響するかの評価が必要となる.
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