研究課題/領域番号 |
15K21668
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
藤村 友美 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 研究員 (90623992)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 感情 / コミュニケーション / 表情 |
研究実績の概要 |
本研究は、コミュニケーション時に生じる感情伝染に着目し、脳波や末梢神経系指標を用いて、感情状態解読モデルを作成することを目的とする。怒り顔や喜び顔を観察すると、それと同一の主観的感情経験すなわち感情伝染が生じることが知られている。そこでまず、平成27年度は、実験室場面で感情伝染を生じさせるため、表情の刺激セットを作成しその妥当性を検証した。日本人モデル8名を対象に基本6感情に加え、感情の次元説に即した表情、中性表情の計11種類の表情刺激を作成した。これらの表情刺激は正面に加え、左右45度と90度の5方向から撮影した画像を含んでいる。これらすべての刺激に対して動画表情と静止画表情を作成し、2つの心理評定実験を行った(実験参加者39名)。1つは、快―不快、覚醒-睡眠の2次元からなる感情空間上で表情が表す感情を評定するアフェクト・グリッド法である。もう1つは、基本6表情と中性表情のみを対象として、7つの言葉の中から表情が表す感情状態に適切なものを1つ選ぶ強制選択法である。強制選択法の結果より、7つの表情について、チャンスレベル以上(14.3%)に意図した感情を表出していると評定された。また、アフェクト・グリッド法の結果より、すべての表情は感情空間上に円環に布置された。以上の結果から、作成した表情刺激セットは、基本感情説および次元説の観点から妥当性の高いものであると考えられる。さらに、右90度方向の刺激(顔右側面)については、正面顔と比較して、怒り、悲しみ表情については、不快度が弱く、興奮、喜び、リラックスについては、快度が弱く評定された。この結果は、演技された表情であっても、顔の右側は感情表出が相対的に弱いことを示しており、感情の半球優位性の知見を支持するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書通り、表情刺激作成を行い妥当性の検証のための心理実験も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
作成した表情刺激セットをもちいて、実験室場面で感情伝染を喚起し、脳波や末梢神経系指標を用いて生体情報を計測し、感情解読モデル作成のデータセットを取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
謝金を支出する必要がなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度額と併せて、脳波計の脳波キャップの予備、生体反応計測に必要な消耗品を購入する。
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