研究実績の概要 |
本研究は,コミュニケーション時に生じる感情伝染に着目し,脳波や末梢神経系指標を用いて,感情状態解読モデルを作成することを目的としている。感情伝染を実験的に引き起こすため,日本人の顔表情刺激を作成した。本年度は,収集した表情に対する心理評定値をもとに誌上発表を行うことができた(Fujimura & Umemura, 2018, Cognition and Emotion)。また,顔表情刺激は,AIST顔表情データベースとして,学術利用に限り無償で公開することができた(https://www.dh.aist.go.jp/database/face2017/)。感情研究のみならず,顔画像の情報処理や認知神経科学における情動刺激として幅広く活用されることが期待される。本顔表情データベースを通じて,感情の学際研究の推進に貢献することができた。 さらに実証実験として,実際に面識のある相手の表情に対する感情反応を調べるため,インタラクションを行った相手(既知人物)と顔表情データベースから選出したモデル(未知人物)の表情に対する表情筋活動を計測する実験を行った。実験の結果,実際にインタラクションをした相手の表情に対しては大きく表情同調が生じる傾向がみられた。本成果は,実験室ベースにおいても,実際に面識がある相手にたいしては,感情伝染が生じやすいことを示唆すると考えられる。本年度の取り組みにより,コミュニケーションにおける感情状態解読モデルを作成するための基盤となるデータを取得することができた。
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