研究課題
セシウム原子泉を運転するためにはレーザの周波数が原子の共鳴線にロックされていることが必須であるため、原子泉を長期間にわたり連続的に運転するためには、モードホップなく長期間周波数ロックをかけ続けられるレーザ光源が必要である。こうした要請に応えるため、共振器内にバンドパスフィルタを挿入することにより波長選択を行い、アライメントに鈍感なキャッツアイ配置を持つタイプの外部共振器半導体レーザを、機械的に頑強にするために位置微調器具を使わずに作製するとともに、大気圧変動による空気の屈折率変化の影響を抑制するために筐体で密閉した。これにより、1ヶ月間連続的に周波数ロックをかけ続けることに成功した。フィードバック信号から推定されるフリーランでの周波数変動はこの期間で275 MHzに抑えられ、気温変動に依存した。気温変化による周波数変動を補償すると、リニアな周波数ドリフトのレートはアラン偏差から< 40 Hz/sと見積もられた。このドリフトレートから、少なくとも110日以上の連続的な周波数ロックが可能であると推定される。また、周波数安定度を上げるために冷却原子の数を増やす必要があるため、通常の蒸気によるローディングではなく、2次元磁気光学トラップによる光モラセスへの原子のローディングにも取り組んでいる。本研究では、粒状のセシウムディスペンザをレーザで活性化して気体原子を放出させ、2次元磁気光学トラップ中に原子を供給する。これにより、セシウムアンプルや電流加熱型のディスペンザを用いるよりも装置が簡便になる。現在、真空装置を組み上げ、2次元磁気光学トラップに必要な光源を準備したところである。
2: おおむね順調に進展している
開始当初から外部共振器半導体レーザの研究が順調に進む見込みがあったので、まずこの研究を進めた。その結果、原子泉の長期運転に耐えうるレーザが開発できたと思う。年レベルで長期連続ロックについては、今後実際に原子泉に用いてみて、経過を見ることによって確認することになろう。2次元磁気光学トラップについては、実験の都合上成果が出るまでに長い準備期間が必要であるが、そうした準備は順調に進んでいる。
外部共振器半導体レーザについては、実際に原子泉の光源として適用するとともに、現状では無駄に筐体が大きいので、筐体のコンパクト化を進めていく。2次元磁気光学トラップに関しては、実験を進めて冷却原子ビームを生成してフラックスや温度等を評価し、光モラセスに十分な原子数を供給できるかを評価する。
既存の研究課題を終えることにしたため、そこで用いていた装置(特に真空チャンバ)を転用できた。また、新たに立ち上がったプロジェクトと使用物品に関して重なる部分があり、特に光源やその周辺の光学部品について共通で使用することができたため。
特に2次元磁気光学トラップに関してはこれからジグや光学部品などをそろえる必要があるので、そのために繰越金を当てていく。もともと研究費総額は申請時の請求額に比べて80万円ほど少ないので、今回繰り越せた金額でその穴を埋めていく予定である。
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