セシウム原子泉を連続的に運転するためには、モードホップなく長期間周波数ロックをかけ続けられるレーザ光源が必要となる。こうした要請のため、バンドパスフィルタを用いて波長選択し、アライメントに鈍感なキャッツアイ配置の共振器を構築して外部共振器半導体レーザを作製した。ここで、不要な周波数変動を除去するため、位置微調器具を使わないことで機械的に頑強な外部共振器とし、さらに筐体で密閉することにより大気圧変動による空気の屈折率変化の影響を抑制した。こうした工夫により、数ヶ月連続で周波数ロックを掛け続けることに成功した。このレーザを原子泉の光源として用い、数ヶ月スパンの長期運転を行った。 原子泉においては、光モラセスや光ポンピングの光学系を改善することにより周波数測定に寄与する原子数を増大させ、周波数安定度を7×10^-14/tau^-1/2 (tau: 平均時間(s))にまで向上させた。また、磁場による2次ゼーマンシフト、黒体輻射によるシフトおよびマイクロ波パワー依存シフトなどについて、システマティックな不確かさを6.1×10^-16と評価した。また、数ヶ月間の国際原子時との比較により、不確かさの範囲内で値が一致していることを確認した。 また、原子泉における原子数向上を目指し、4方向からの冷却レーザーと長方形のコイル4つを準備して、2次元磁気光学トラップを生成した。ここで、レーザの照射により活性化するタイプのセシウムディスペンサーを利用することにより、装置をコンパクト化した。
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