本研究は液化水素の大気拡散簡易評価モデルの構築を念頭に、極低温の低密度ガスプルームの性状解析を行い、簡易評価モデルに必要な数理モデルの開発を行うことを目的としている。今年度は、浮力によって駆動するプルームの数理モデルを構築することを目的として、常温のヘリウムガスを用いた浮力プルーム実験および3次元数値流体力学シミュレーション(以降CFD計算と略す)を実施するとともに、従来のプルーム主軸の速度に空気連行速度が比例するモデルではなく、エネルギー保存則を満足する関係式から得られる空気連行モデルの適用性について検討を行った。 昨年度に引き続き、空気連行モデルの開発を目的として直径約100mmのノズルから発生させた浮力プルームに対して、トレーサー粒子のシーディング方法等の工夫を行ったが、連行される周囲の空気が初期運動量を持ってしまい満足する結果を得ることができなかった。 実験室スケールでの計測が当初のとおり進まなかったため、米国Sandia国立研究所で実施された直径1mノズルの大規模なヘリウムプルーム実験を計算対象とする、CFD計算の結果をもちいて従来の空気連行モデルとは異なるエネルギー保存則を満足する空気連行モデルの適用性の検討を行った。 本研究では、ヘリウムのような密度が空気と大きく異なる場合に適用するため、ブジネスク近似を施さないエネルギー保存則を満足する空気連行モデルの定式化を行った結果、浮力と慣性力の比を示すリチャードソン数の関数として表現され、浮力によって空気連行が起こる物理現象を数式として表現されることを示した。 最後に、上記の空気連行モデルでは圧力の項および変動成分の影響を考慮した各種係数が必要であるため、変数の数に対して式の数が不足しており閉じることができない。よって、今後の展望としてはこれらの係数および圧力の項を求めるための数式の構築を行っていく。
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