疾患の有無を非侵襲的に簡易に検査するための手段として、生体組織の電気定数(誘電率、導電率等)に着目した。本研究では生体組織の電気定数だけではなく、実効的な診断領域(実効診断領域)を明らかするための検討を実施した点が特徴として挙げられる。この実効診断領域を明らかにすることで、電気的な特性が変化した部位や組織、例えば疾患箇所を明らかにすることが可能である。また、正確な診断が求められる医療現場において、診断の信頼性の確保は必須であることから、本研究においては、電気定数測定における信頼水準を明らかにするための検討を実施した点も、特色として挙げられる。本研究を利用することで、正常組織と疾患組織(例えばガン組織)の電気定数の変化から、将来的には専門的技術を必要とせず、疾患の可能性を簡易に推定するためのアプリケーション開発への展開が期待される。 本研究成果の具体的な内容を以下に記述する。初めに電気定数および実効診断領域の定量化手法について検討を実施した。実効診断領域の定量化手段として、専用の数値電磁界解析プログラムを構築し、汎用性に優れた商用の電磁界シミュレーターよりも効率的に実効診断領域等の評価が可能なシステムを構築した。また、電気定数測定値の信頼水準の評価手段として、複数の測定法に含まれる系統誤差を明らかにし、かつ相互に比較することで、測定精度および応答性に優れた測定法を選定することが可能となった。これまでの成果を活用し、非侵襲センサを試作し、数10 MHzから数 GHz帯の電気定数測定に基づいた、非侵襲診断システムを提案した。動物の採取組織(ヒフ)に対して温度ばく露を実施し、温度ばく露前後でのヒフ組織の電気的定数を提案した診断システムを用いて観測することで、構築したシステムの可能性について考察した。
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