研究実績の概要 |
研究代表者は、対流圏や成層圏に比べ観測領域や分解能が乏しく、未解明な現象が多い中間圏から下部熱圏における重力波活動に伴う循環場の3次元構造を明らかにすべく研究を進めている。今年度は主に大気大循環を3次元に記述する理論研究の発展を行った。具体的に、中間圏の波は振幅が大きいだけでなく、太陽光加熱の影響も大きく、非断熱加熱を含む非保存項に伴う物質輸送を無視することができない。このことは昨年論文化した温位座標における有限振幅波にも適用可能な3次元波活動度フラックスに関する研究(Kinoshita et al. 2016)を進める中で新たに確認できたことである。そこで、研究代表者が過去に導出した理論研究と上記研究を組み合わせることで、新たに非断熱加熱項とバランスする3次元残差流の導出に成功した(Kinoshita and Sato 2017)。この新たな残差流は、停滞性惑星波そのものによる温位面のゆがみの効果が新たに考慮されている。物質輸送は鉛直方向には温位面、水平方向には渦位面により束縛を受けることが知られている。そこで申請者はさらに理論を発展させ、停滞性惑星波そのものによる渦位ゆらぎの効果も含めた3次元残差流の導出を行った。この研究は論文化し昨年度末に投稿した。 一方、アラスカPoker Flat (65N, 147W)およびTromso (70N, 19E) MF radar 長期観測データ、気象再解析モデルデータを用いた解析については議論の結果、さらなる解析が必要であると判断し、引き続き論文化に向けて解析を行っている。
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