研究課題/領域番号 |
15K21676
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
加藤 博司 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究員 (70722536)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 逐次型データ同化 / 乱流モデル / 不確かさ / CFD |
研究実績の概要 |
本研究課題では、統計数理手法「データ同化」の導入により風洞、CFD を統合化し、最も確からしい設計指標を与える新しい設計技術を提案することを目指している。本年度に取り組んだことは以下の2つである。 1.データ同化・プラットフォームの構築・検証 宇宙航空研究開発機構(JAXA)で開発が進められている流体解析ソルバー「Fast Aerodynamic Routines (FaSTAR)」への逐次型データ同化手法「アンサンブルカルマンフィルター」、「アンサンブルカルマンスムーザー」、「アンサンブル変換カルマンフィルタ」、「アンサンブル変換カルマンスムーザー」の実装を完了した。また、実装方法として、流体解析ソルバーのリスタートフィアルを利用するデータ同化コードを用意することで、1つの流体解析ソルバーに依存しないデータ同化・プラットフォームの構築を行った。なお、データ同化コードは、非線形観測にも対応させている。 2.乱流モデル内のモデルパラメータ値最適化による予測可能性最大化 乱流モデルに内在するモデルパラメータの内、経験的・実験的に値が決定されているモデルパラメータに対しデータ同化を適用した。具体的には、航空機の外部流を対象とした流体解析の中で広く使われるMenter SST-2003モデルの乱流粘性係数の評価式中に含まれるa1というモデルパラメータ値を最適化することで、剥離流に対するモデル予測可能性の最大化に成功した。本成果は、航空宇宙分野のトップジャーナルであるAIAA Journalにおいて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、本年度は、データ同化プラットフォームの構築・検証を達成した。また、実際に、乱流モデルの予測可能性最大化についての成果を創りだし、本研究計画の目標ではある風洞、CFD を統合化した新しい設計技術の可能性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、構築したデータ同化プラットフォームを活用し、以下の2つの研究課題に取り組む予定にしている。1つは、乱流モデルで可能性を示したデータ同化技術を更に複雑な物理モデルに適用し、特に、乱流遷移モデルを対象とした研究を進めていく予定である。2つ目は、観測困難な物理量をデータ同化技術で推定する試みである。一般的に、航空宇宙分野は現象の時空間スケールが小さいことから、計測困難なもの物理量が多い。特に、計測困難な表面摩擦係数を計測可能な異なる物理量から推定する研究を進めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年11月にオーストラリアで開催されたAPISAT2015(航空宇宙関連の国際学会)に出張を予定していたが、当月に発生したパリでの大規模テロを受け、出張を取りやめた。そのことにより旅費として使用予定の経費を次年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
海外の研究機関・大学への情報収集費、今年度の研究計画内で検討している実験経費としての使用を予定している。
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